薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 334
74歳男性。4年前に前立腺がんStageⅢとの診断により内分泌療法が開始された。今回、内分泌療法抵抗性となったため、「ドセタキセル75 mg/m2、1日1回、1時間かえて点滴投与、3週間毎」を開始した。
化学療法施行中、患者から「注射している所がひりひりして痛い」との訴えがあった。薬剤師が確認したところ、左前腕の点滴ルート刺入部位に腫脹を認め、薬液が皮下に漏出していた。
連絡を受けた医師が直ちに点滴の注入を止めた。この患者に対する対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 留置針に残った薬液をシリンジで回収する。
2 左前腕を胸より高い位置にあげる。
3 漏出部位を温める。
4 左前腕の漏出部位以外から点滴を再開する。
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解答 1、2
抗悪性腫瘍薬は、細胞毒性を有するため、点滴時の血管外漏出により組織の炎症や壊死をもたらすことがある。血管外漏出直後は、無症状あるいは、軽い発赤・腫れ・痛みの皮膚症状が出現するが、数時間〜数日後にその症状が増悪し、水泡、潰瘍、壊死形成の順に移行していく。さらに重症化すると瘢痕(はんこん)が残ったりケロイド化し、漏出部位によっては運動制限をきたして外科的処置(手術)が必要になることもある。そのため、血管外漏出を起こさないような予防と、血管外漏出時の迅速で適切な処置が重要である。
抗悪性腫瘍薬は、血管外漏出時の組織侵襲の程度により、起壊死性抗悪性腫瘍薬、炎症性抗悪性腫瘍薬、非壊死性抗悪性腫瘍悪の3種類に分類されている。本患者に投与されているドセタキセルは起壊死性抗悪性腫瘍薬に分類されており、少量の漏出でも強い痛みが生じ、腫脹、水泡、壊死などの皮膚障害を起こし、結果として潰瘍形成に至ることがあるとされている。
ドセタキセルの血管外漏出時の対応は、直ちに薬剤の注入を中止し、留置針に残った薬液をシリンジで吸引してから針を抜く。その後、漏出した部位を胸(心臓)より高い位置に挙げ、漏出部位を冷却することで薬剤の限局化を行う。
1 正
上記参照
2 正
上記参照
3 誤
血管外漏出が疑われる場合、原則として冷たい水や冷湿布などで冷やして抗がん剤の限局化を図る。ただし、例外としてビンカアルカロイド系は冷やすと逆に組織障害が増悪してしまうという報告があるため、温めた方が良いとされている。
4 誤
血管外漏出が生じた後、漏出部位と同一部位から投与を再開すると再び血管外漏出を起こす可能性が高いため、漏出した部位には投与しない。本問では左前腕より漏出が生じたため、左腕以外から点滴を再開する。
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