薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 理論問題 - 問 116
ヒトの免疫担当細胞に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 特異的な抗原を認識したB細胞は、ヘルパーT細胞の助けを受けて、抗体産生細胞へと分化する。
2 マクロファージの細胞表面にあるFc受容体は、外来菌体成分と直接結合する。
3 肥満細胞は、B細胞に対する抗原提示能を有する。
4 活性化したヘルパーT細胞上に発現したCTLA−4(細胞障害性Tリンパ球抗原−4)分子は、その細胞自身に抑制性シグナルを伝える受容体として働く。
5 ナチュラルキラー細胞は、抗原感作を受けて初めて腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対する傷害性を有する。
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解答 1、4
1 正
B細胞は、骨髄の分化において抗体可変部の遺伝子再構成を行い、個々の抗原に対応できる特異的な抗体として、抗原受容体(BCR)を細胞膜上に発現する。その後、B細胞は二次リンパ器官に移行し、BCRにより補足した抗原を分解し、抗原ペプチド断片をMHCクラスⅡ分子に結合させ、2型ヘルパーT(Th2)細胞に提示する。また、抗原提示してB細胞は、サイトカインのなどの刺激を受けることにより、抗体産生細胞へと分化する。
2 誤
Fc受容体は、抗原に結合した抗体のFc部に対する受容体であり、外来菌体成分(抗原)と直接結合するわけでない。なお、マクロファージの細胞表面にあり、外来菌体成分と直接結合するのは、Toll様受容体(TLR)などがあげられる。
3 誤
肥満細胞は、B細胞に対する抗原提示能を有さない。
抗原提示とは、樹状細胞、マクロファージ、B細胞などの免疫担当細胞が、抗原由来のペプチド断片をMHCクラスⅡ分子に結合させて、ヘルパーT細胞に提示することである。なお、肥満細胞は、MHCクラスⅠ分子を発現しているため、肥満細胞がウイルスに感染されると、ウイルス由来のペプチド断片をキラーT細胞に提示することができる。
4 正
T細胞は、細胞表面に存在するT細胞抗原受容体TCRとCD4またはCD8により、抗原提示細胞に存在するMHC分子と抗原ペプチドとの複合体に結合し、抗原を特異的に認識することができる。
TCRで獲得した抗原情報は、T細胞内にシグナル伝達されるが、その際、T細胞の活性化のため、別のシグナル(共刺激シグナル)を必要とする。共刺激シグナルは、T細胞表面のCD28が抗原提示細胞表面に存在するCD80/86に結合することより促進される。したがって、CD28は促進性シグナルを伝える受容体として働く。また、本問のCTLA-4はCD80/86と結合することで、共刺激シグナルの発生を抑制し、かつ、T細胞を鎮める抑制シグナルを伝達する。したがって、CTLA-4によりT細胞の過剰な活性化が抑制されると考えられている。
5 誤
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫を担う細胞であり、抗原感作を受けずに腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対する傷害性を有する。なお、抗原感作を受けて初めて腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対する傷害性を有するのは、獲得免疫を担う細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)である。
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