薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 理論問題 - 問 137,138,139,140
新生児マススクリーニングは、先天性代謝異常を出生直後に早期発見し、栄養療法による早期治療を目指す事業である。近年、新たな新生児マススクリーニングとしてタンデムマス法を用いた脂肪酸代謝異常症の検査が始まった。検査できる主な脂肪酸代謝異常症には、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT-1)欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症がある。図1はヒトにおける長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸の代謝の概略である。ミトコンドリアにおいて、VLCADは長鎖脂肪酸、MCADは中鎖脂肪酸のβ酸化に関与する。なお、3種の代謝異常症に関わる酵素を で示している。
問137
図1に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 長鎖脂肪酸の分解の律速段階は、CPT-1によるカルニチンのアシル化である。
2 CPT-1は、脂肪酸生合成の中間体のマロニルCoAにより活性化される。
3 脂肪酸のβ酸化では、NADHからNAD+が生成される。
4 β酸化により生成したアセチルCoAは、クエン酸回路で利用される。
5 VLCAD欠損症の患者では、中鎖脂肪酸からアセチルCoAを産生できない。
問138
β酸化による脂肪酸の代謝反応のうち、脂肪酸と補酵素A(CoASH)が縮合したチオエステルaからアセチルCoA(化合物f)が生じる経路を示す。下の記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、ア及びイは補酵素であり、チオエステルはエステルと同様の反応を起こすものとする。
1 化合物aからbへの変換には、補酵素アが必要である。
2 化合物bからcへの反応は、酸化反応である。
3 化合物cからdへの変換には、補酵素イが必要である。
4 化合物dからe及びfへの反応では、CoASHが求核剤としてはたらいている。
5 化合物dのチオエステルのα-水素の酸性度は、化合物aのものよりも低い。
問139
新生児マススクリーニングで使われているタンデムマス法は、2段の質量分離部を用いる方法である。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 タンデムマス法では、質量分離部が並列に配置されている。
2 試料は冷蒸気法によってイオン化される。
3 1段目の質量分離部で選択される特定のイオンのことを、プリカーサーイオンという。
4 プリカーサーイオンは、電子を衝突させることによりさらに解離される。
5 タンデムマス法は、アミノ酸や有機酸などの代謝物の一斉分析にも有用である。
問140
図2は、タンデムマス法により測定した新生児A〜Eの血液試料中のアシルカルニチン分子種の定量結果である。それぞれの疾患の診断基準を以下に示す。C8、C16及びC18の数字は、アシルカルニチンに含まれる脂肪酸の炭素数を、C14:1は炭素数と二重結合が1つあることを表す。またC0は、遊離カルニチンを表す。ここでは炭素数12以上を長鎖脂肪酸、炭素数8と10を中鎖脂肪酸とする。
<疾患の診断基準>
CPT-1欠損症 C0/(C16+C18)>100 かつ C0>60 µmol/L
VLCAD欠損症 C14:1>0.4 µmol/L
MCAD欠損症 C8>0.3 µmol/L
図2の測定結果から考えられる新生児A〜Eの疾患名と、図1の代謝経路に基づいて実施すべき栄養療法の組合せのうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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