薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 理論問題 - 問 173
ある固体薬物Aに粉砕や再結晶などの処理を行ったところ、下図の粉末X線回折パターンを示す固体a、b、cが得られた。別の方法で再結晶を行ったところ、異なる回折パターンを示す固体dが得られた。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、粉末X線回折測定に必要な前処理により、薬物Aの化学変化や固体組成の変化は生じないものとする。
1 固体a〜dの回折パターンを比較することにより、それぞれの結晶の外観の相違を判断できる。
2 固体aと固体bの回折パターンを比較することにより、固体aの水分量は固体bより多いことが判断できる。
3 固体aと固体dの回折パターンから、両者の結晶の単位格子の大きさが異なっていることが判断できる。
4 固体bと固体dは、結晶多形の関係にあると判断できる。
5 固体cの回折パターンから、本品の結晶性は著しく低いことが判断できる。
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解答 4、5
粉末X線回折測定法は、原則として無配向化した粉末試料にX線を照射し、物質中の電子を強制振動させることにより生じる干渉性散乱X線による回析強度を、各回析角について測定する方法である。
粉末X線回折測定法により得られた回析パターンは、試料中の結晶の単位格子の種類や大きさに依存する。
なお、結晶格子とは構成分子や原子が一定の周期性をもって規則正しく三次元的に整列するときの最小単位であり、回析角度が一致すれば同じ結晶構造(単位格子は同じ)回析角度が異なれば結晶多形(単位格子は異なる)、であると判断できる。
1 誤
固体a~dの回折パターンから、結晶の外観の相違は判断できない。
2 誤
固体aと固体bの回折パターンから水分量を判断することができない。
3 誤
固体aと固体dの回折パターンは、回析角度が同じであるため、同一結晶構造(結晶の単位格子の大きさが同じ)であることが判断できる。
4 正
固体bと固体dの回折パターンは、回折角度が異なるため結晶多形の関係にあると判断できる。
5 正
固体cの回折パターンは、明確なピークが観察されない(ハローパターン)ため、構造の規則性を持たない非晶質である判断できる。よって、本品の結晶性は著しく低いことが判断できる。
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