薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 200,201

50歳女性。身長160 cm。体重72 kg。地域の健康フェアで指の穿刺血液による空腹時血糖値とHbA1c値の測定を行った。測定結果は空腹時血糖値が95 mg/dL、HbA1c値が5.6%（NGSP値）であった。後日、女性は近隣の薬局に測定結果の相談に訪れた。女性の仕事はデスクワーク中心で、職場までは自家用車で通勤しており、運動不足であった。また、洋菓子と果実ジュースが好きで毎日間食し、ワインを毎晩グラス1杯飲んでいた。

問200（実務）
相談を受けた薬剤師の対応として適切なのはどれか。２つ選べ。

１　空腹時血糖値が糖尿病の診断基準を超えているので、すぐに受診するよう伝えた。
２　HbA1c値が糖尿病の診断基準を超えているので、すぐに受診するよう伝えた。
３　運動不足を解消するよう助言した。
４　間食を少なくするよう助言した。
５　食後高血糖の可能性もあるので、今後毎日、食事をした後にHbA1c値を測定することを勧めた。


問201（物理・化学・生物）
この健康フェアで行われている血糖値の簡易測定においては、グルコース脱水素酵素あるいはグルコース酸化酵素が用いられており、検出には酵素比色法及び酵素電極法が用いられている。今回用いられている血糖値測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。２つ選べ。

１　グルコース脱水素酵素を用いる血糖値測定法では、マルトースは測定の妨害とならない。
２　グルコース酸化酵素を用いる血糖値測定法では、酵素反応によって生じた過酸化水素が利用される。
３　グルコース酸化酵素を用いる酵素比色法では、波長215 nmの光が用いられる。
４　グルコース脱水素酵素及びグルコース酸化酵素を用いる血糖値測定法では、指に付着した果汁中のグルコースが測定の妨害となる。
５　酵素電極法においては、酵素がグルコースと反応した際に酵素自体に生じる電位差変化を検出する。

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問200　解答　３、４

本患者は、体重 72 kg、身長160 cmより、BMIが28.1（体重（kg）÷身長（m）2＝72÷1.62≒28.1）となる。BMI 25≦〜＜30は肥満（Ⅰ度）に分類されるため、本患者は運動不足や食生活による肥満と判定される。穿刺血液による測定結果は空腹時血糖値が95 mg/dL、HbA1c値が5.6%となっている。糖尿病型の判定は、空腹時血糖値126 mg/dL以上、HbA1c 6.5％以上のいずれかを満たした場合となっているため、本患者は糖尿病の可能性は低いと考えられる。相談を受けた薬剤師は、肥満は糖尿病を誘発するリスク要因となるため、運動不足の解消と食生活の改善をするように助言する必要がある。

１　誤
前記参照。

２　誤
前記参照。

３　正
前記参照。

４　正
前記参照。

５　誤
HbA1cは、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するため、食後高血糖の測定には用いられない。


問201　解答　２、４

血糖値の測定は、酵素比色法と酵素電極法がある。酵素比色法には、グルコース酸化酵素やグルコース脱水素酵素を用いる方法があり、酵素電極法には、グルコースオキシダーゼ電極法やグルコースデヒドロゲナーゼ電極法がある。

１　誤
グルコース脱水素酵素を用いた血糖値測定法は、グルコース以外の糖とも反応するため、マルトースは測定の妨害（実際の血糖値よりも高い値を示す）となる。

２　正
グルコース酸化酵素（GOD）を用いる血糖値測定法では、グルコースをGODによって酸化することで生成した過酸化水素（H2O2）を定量する。H2O2はペルオキシダーゼ（POD）存在下で還元型色素と反応し、酸化型色素（赤色）を生じる。この色素を505〜570 nmで測定することにより、グルコース濃度を求める。

３　誤
解説２参照。

４　正
果汁中にはグルコースが含まれているため、血液を採取する際、穿刺した指に果汁が付着していると果汁中のグルコースが測定の妨害となる。

５　誤
酵素電極法では、グルコースオキシダーゼがグルコースと反応した際に、［FeⅢ（CN）6］3－から［FeⅡ（CN）6］4－が生成する。この際に生じる電位差変化を測定する。よって、酵素自体に生じる電位差変化を検出するわけではない。

解説動画１ ( 21:17 )  

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