薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 216,217
78歳女性。体重45 kg。骨粗しょう症、うつ病及び不眠症のため下記の処方薬を服用していた。最近、食欲がなくなり、とても体がだるいとの訴えを聞いた家族が、この女性を通院中の病院に連れて来たところ、そのまま入院となった。
入院時の検査の結果、低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム高値、高張尿が見られた。しかし、脱水症状は無く、腎機能及び副腎皮質機能が正常であり、上記以外の疾患はなかった。その結果、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)と診断された。診断した医師から薬剤師に薬学的管理について相談があった。
問216(実務)
この患者の薬学的管理に関する提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アルファカルシドールカプセルの中止
2 パロキセチン錠の中止
3 ゾピクロン錠の中止
4 塩化ナトリウムの投与
5 積極的な水分摂取
問217(物理・化学・生物)
この患者の検査結果で見られた異常の原因として適切なのはどれか。1つ選べ。
1 腎臓の集合管におけるプロテインキナーゼA活性の阻害
2 腎臓の集合管での水分の再吸収の促進
3 腎臓のへンレループ上行脚におけるNa+/K+/2Cl-共輸送体の阻害
4 腎臓のへンレループ下行脚での水分の再吸収の促進
5 下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(パソプレシン)分泌の抑制
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問216 解答 2、4
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は、抗利尿ホルモン(ADH:バソプレシン)が異常に分泌され、低浸透圧血症や低ナトリウム血症などをきたす病態である。原因としては、呼吸器疾患、頭蓋内疾患、悪性腫瘍、異所性バソプレシン産生腫瘍や薬剤性などがあり、薬剤性としては、抗精神病薬(統合失調症治療薬)や抗うつ剤などによるものが報告されている。
本症例ではSIADHの原因薬物の1つである抗うつ剤のパロキセチンが処方されているため、薬剤性SIADHを引き起こしていると考えられる。
薬剤性SIADHが認められた場合には、原因薬物の投与を中止し、水分摂取の制限や食塩(塩化ナトリウム)の投与等の処置を行う。
問217 解答 2
SIADHでは、バソプレシンの異常分泌が原因で腎臓の集合管で水の再吸収が促進することにより、低浸透圧血症、低ナトリウム血症、高張尿などの検査所見を呈する。
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