薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 218,219
問218〜219
27歳女性。1年前に結婚し、近いうちに子供が欲しいと考えている。自分の母子手帳を確認したところ、麻しんワクチンの接種記録が1回であった。近隣の病院に設置されたお薬相談コーナーに、麻しんワクチン接種の相談に訪れた。麻しんワクチン製剤は現時点で入手の見通しが立たないので接種できないが、当該病院には麻しん風しん混合ワクチン製剤の在庫がある。
問218(実務)
相談を受けた薬剤師が、この女性に行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 麻しんワクチン接種歴が1回あるので、追加のワクチン接種は必要ありません。
2 マスクを着用し、手洗いをすれば、ワクチン接種は必要ありません。
3 麻しんワクチンの代替として、麻しん風しん混合ワクチンを接種できます。
4 妊娠していても、ワクチン接種はできます。
5 ワクチン接種後約2ヶ月間は妊娠しないように注意してください。
問219(物理・化学・生物)
この女性への説明事項の根拠として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 麻しんウイルスは、主として腸管粘膜で増殖し、リンパ節へと拡散する。
2 麻しんウイルスは、回帰発症により帯状抱疹を生じさせる。
3 麻しんウイルスは空気感染はせず、飛沫感染及び接触感染によって伝播する。
4 麻しん風しん混合ワクチンは、麻しんワクチンと同様に麻しんウイルスに対する細胞性免疫を獲得させる。
5 麻しん風しん混合ワクチン中の麻しんワクチンは、弱毒生ワクチンである。
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問218 解答 3、5
1 誤
麻しんのワクチン接種は、1度では十分な免疫が獲得できない場合があるため、2度目の接種が推奨されている。そのため、麻疹ワクチンを一度しか接種したことがない人に対しては、追加のワクチン接種を提案することが望ましい。
2 誤
麻しんに対する予防法として、予防接種が効果的である。麻しんウイルスの感染力は非常に高く、飛沫感染、接触感染だけでなく空気感染によっても感染が拡がる。そのため、マスクの着用や手洗いは、感染の予防効果として不十分とされている。
3 正
麻しんワクチンの代替として、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を接種しても特に問題はない。MRワクチンの接種によって風しんに対しても免疫が得られる利点がある。
4 誤
麻しん風しん混合ワクチンは生ワクチンであるため、胎児への影響を考慮し、妊婦に対して接種禁忌である。
5 正
妊娠すると母体の免疫機能が低下するため、麻しんや風しんなどの生ワクチンを接種すべきでない。特に妊婦が、妊娠初期に風しんにかかると、胎児に異常(先天性風しん症候群)が現れることがある。そのため、妊娠可能な女性が生ワクチンを接種する際は、あらかじめ約1ヶ月間は避妊し、ワクチン接種後の約2ヶ月間も避妊する必要があることを説明する。
問219 解答 4、5
1 誤
麻疹ウイルスは、腸管粘膜ではなく気道粘膜で増殖する。麻疹ウイルスは、経気道的に体内に侵入、感染し、上気道などの局所の粘膜上皮で増殖後、リンパ節へと拡散し、感染リンパ球を介して感染が拡大する。
2 誤
麻しんウイルスに感染すると、2週間前後の潜伏期を経て、発熱と感冒様症状で初発し(カタル期)、解熱するとともに口腔粘膜に白色斑(コプリック斑)がみられる。その後、再度発熱し、全身に皮疹がみられる。麻しんは一度治癒した後に、ストレスや免疫抑制などを契機に再活性化し、再度発症(回帰感染)することはないと考えられている。なお、回帰感染により帯状疱疹を生じさせるのは、水痘・帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)である。
3 誤
問218解説2参照。
4 正
麻しん風しん混合ワクチンは、弱毒生ワクチンであるため、両ウイルスの細胞性免疫、体液性免疫を獲得することができる。また、不活化ワクチンを接種した場合は、体液性免疫のみ獲得可能である。
5 正
解説4参照。
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