薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 250,251
75歳男性。7年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩配合錠の投与によって日常生活は問題のないレベルを維持してきた。胃がんの手術のため外科病棟に入院したところ、この配合錠を正しく服用しているにもかかわらず、症状の日内変動(wearing−off現象)が認められるようになった。
問250(実務)
外科の主治医から病棟担当薬剤師に、wearing−offの治療に関する相談があり、一剤追加することになった。提案すべき併用薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 トリヘキシフェニジル塩酸塩
2 イストラデフィリン
3 ドロキシドパ
4 ビペリデン塩酸塩
5 エンタカポン
問251(薬理)
前問で提案すべき併用薬物の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 線条体において、アデノシンA2A受容体を遮断する。
2 線条体において、ドパミンD2受容体を遮断する。
3 芳香族L—アミノ酸脱炭酸酵素によりノルアドレナリンに変換され、脳内のノルアドレナリンを補充する。
4 主に末梢において、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害し、レボドパの代謝を抑制する。
5 線条体において、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断する。
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問250 解答 2、5
wearing−off現象とは、レボドパの効果持続時間が短縮し、レボドパ製剤を正しく服用しているにも関わらず、効果が消退してしまう現象である。
このような場合は、
① 1日の服用量の範囲内でレボドパ製剤の投与回数を増やすなどの処置を行う
② イストラデフィリン、エンタカポン、セレギリン、ゾニサミド、アポモルヒネなどの追加投与を行う
などの対処が必要である。
問251 解答 1、4
1 正
イストラデフィリンの作用機序である。イストラデフィリンは、アデノシンA2A受容体拮抗薬であり、線条体と淡蒼球において、アデノシンのアデノシンA2A受容体への結合を阻害し、ドパミン神経の変性・脱落によるGABA神経過剰興奮を抑制することで、アンバランスになった神経のシグナル伝達を正常な状態に近づけ、運動症状を改善する。
2 誤
抗パーキンソン病薬には設問の作用機序に該当する薬物はない。なお、抗パーキンソン病薬のうち、ドパミン神経に作用する薬物としては、ドパミンD2受容体刺激薬であるブロモクリプチン、プラミペキソールなどがある。
3 誤
ドロキシドパの作用機序である。ドロキシドパは、血液-脳関門を通過し、脳内で芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素による代謝を受けてノルアドレナリンに変換され、脳内のノルアドレナリンを補充することでパーキンソン病におけるすくみ足などを改善する。
4 正
エンタカポンの作用機序である。エンタカポンは、末梢におけるカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害して、末梢でのレボドパの代謝を抑制し脳内移行量を増加させるため、レボドパ製剤使用時のwearing−off現象の改善に用いられる。
5 誤
トリヘキシフェニジルやビペリデンなどの作用機序である。トリヘキシフェニジルは、中枢性コリン薬であり、黒質線条体のムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断するため、薬剤性パーキンソン症候群の治療に用いられる。
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