薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 286,287
82歳女性。以前より意識清明であったが、記銘力の低下を指摘されていた。今回、トイレに行こうとして転倒し、大腿骨骨折のため整形外科に入院した。入院中に認知機能の低下、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害が現れたほか、PETにて後頭葉の血流低下を認め、アルツハイマー型以外の認知症が強く疑われ、ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠による治療が開始された。
問286(病態・薬物治療)
この患者の認知症の病態と症状に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 幻視が現れることが多い。
2 病理組織学的には、大脳にレビー小体が認められる。
3 記憶障害は周辺症状である。
4 ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が存在する。
5 運動ニューロンが傷害され、全身の筋力低下が認められる。
問287(実務)
ドネペジル製剤の医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要から、下記のような「重要な特定されたリスク」が確認できた。これらの回避のために、薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 心機能のモニタリングの必要性を医師に伝える。
2 急性膵炎予防のため、カモスタットメシル酸塩錠の併用を医師に提案する。
3 パーキンソニズムが悪化した場合、ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠の増量を医師に提案する。
4 消化性潰瘍予防のため、ランソプラゾール口腔内崩壊錠の投与を医師に提案する。
5 血小板減少の早期発見のため、出血などに注意することを医療従事者間で情報共有する。
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問286 解答 1、2
本患者の所見として、入院中に認知機能の低下、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害が現れていること、PETにて後頭葉の血流低下を認めていること、そして、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に適応を有するドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠による治療が開始されたこと、アルツハイマー型認知症以外の認知症が強く疑われていることから、本患者はレビー小体型認知症であると推測される。
1 正
レビー小体型認知症の特徴的な所見として高度の幻視がある。
2 正
レビー小体型認知症では、大脳皮質を中心にレビー小体が出現する。
3 誤
記憶障害や幻視は、レビー小体型認知症の中核症状に該当する。
4 誤
ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が認められるのは重症筋無力症である。
5 誤
運動ニューロンが傷害され、全身の筋力低下が認められるのは、筋萎縮性側索硬化症などである。
問287 解答 1、5
1 正
ドネペジル製剤の医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要に「徐脈、心ブロック、洞不全症候群、洞停止、QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む)、心室細動、失神」の記載があるため、心機能のモニタリングの必要性を医師に伝えることは適切である。
2 誤
カモスタットメシル酸塩はタンパク分解酵素阻害薬であり、慢性膵炎における急性症状の緩解に用いられるが、予防的投与としては使用されない。
3 誤
ドネペジル製剤使用時にパーキンソニズムが悪化した際は、増量を提案するのではなく、減量もしくは中止、あるいはレボドパの投与を提案すべきである。
4 誤
ランソプラゾールは消化性潰瘍と診断された患者に投与され、予防的投与には使用されない。
5 正
ドネペジル製剤の医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要に「血小板減少」の記載があるため、医療従事者間での情報共有の内容として適切である。
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