薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 324,325
隣接県において、直下型の地震が発生した。ある薬局においては、医薬品、物品等が床に落ちたものの、調剤室が損壊するなどの復旧工事を要するような大きな被害は生じなかった。しかし震源地周辺の広範囲において、建物の崩壊やライフラインの寸断等、大きな被害が発生し、内閣府には緊急災害対策本部が設置された。
問324(法規・制度・倫理)
この薬局に勤務する薬剤師の地震発生後の活動として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 避難所での活動に参加し、被災者に必要な一般用医薬品を供給した。
2 医師会から薬剤師会にJMATへの協力要請があり、参加薬剤師の募集がなされたので、参加の意思を表明した。
3 ボランティアが不眠を訴えたので、処方せんはなかったが、向精神薬を交付した。
4 被災者から、健康や食事の相談を受けたため、アドバイスを行った。
5 被災地に送られてくる医薬品の集積場所において、医薬品の仕分け、管理を行った。
注)JMAT:日本医師会災害医療チーム
問325(実務)
このような災害への備えとして平時に薬局で準備しておくこととして適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 災害時連絡先の一覧表の作成
2 近隣の医療機関・薬剤師会との連携の確認
3 卸売販売業者との医薬品供給体制の確認
4 災害時対応についての患者教育の地方自治体への一任
5 災害時用備蓄医薬品の選定と確保
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問324 解答 3
1 正しい
被災地における薬剤師は、避難所での活動に参加し、医療チームとの連携の下で患者から状況等を聴き、適切な一般用医薬品や要指導医薬品を供給する。なお、一般用医薬品や要指導医薬品では対応が難しいと考えられる場合は医療機関への受診を促す。
2 正しい
JMAT(日本医師会災害医療チーム)とは、医師会が組織する医療チームであり、避難所等における医療と被災者の健康管理、被災地の病院等の医療支援等を行う。JMATは一般に医師1名、看護職員2名、医療保険事務職員1名を基本構成員とするが、被災地の状況に応じて、薬剤師や臨床検査技師、理学療法士、作業療法士等の医療スタッフも含まれることがある。
したがって、JMATへの参加薬剤師の募集がなされた場合、参加の意思を表明しても差し支えない。
3 誤っている
向精神薬は処方せん医薬品に分類されており、医師等から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し又は授与してはならない。なお、災害時において、医師等の処方せんの交付が困難な場合、被災者に対し必要な処方箋医薬品を販売又は授与することができる。しかし、本問は、被災者ではなく被災地を訪れたボランティアが不眠を訴えている。ボランティアは被災者ではなく医師等の処方せんの交付を受けていない場合、向精神薬を交付してはならない。また、向精神薬を処方せんなしに交付することは、麻薬及び向精神薬取締法に違反する。
4 正しい
被災者における薬剤師は、被災者のセルフメディケーション支援のため、健康や食事の相談を受けた場合、アドバイスを行う。また、この他、避難所における一般用医薬品の保管・管理、衛生管理及び防疫対策などの活動も行うように求められている。
5 正しい
薬剤師は、被災地に送られてくる医薬品の集積場所において、集積医薬品等の仕分けや保管・管理や保健所等からの要望に応じた医薬品等の供給、不足医薬品等の発注などを行うことが求められる。
問325 解答 4
「薬剤師のための災害対策マニュアル」には、災害への備えとして平時に薬局で準備しておくことが定められている。
① 災害時連絡先の一覧表の作成
② 近隣の医療機関・薬剤師会との連携の確認
③ 卸売販売業者との医薬品供給体制の確認
④ 患者教育(非常時に備え用意しておく医薬品等の啓発・相談、患者に薬剤情報提供文書を医薬品と一緒に保管することで啓発等)
⑤ 災害時用備蓄医薬品の選定と確保
1 適切
前記参照
2 適切
前記参照
3 適切
前記参照
4 不適切
災害時対応についての患者教育は、災害への備えとして平時に薬局で準備しておくことであり(前記参照)、地方自治体への一任は適切でない。
5 適切
前記参照
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