薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 218,219
65歳男性。非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)と診断され、切除術を受けた。2年後に再発が確認されたため、治療方針を検討することになった。患者の状態は、ステージⅣ、ECOG PS 3(注)である。
(注)ECOG PS(Eastern Cooperative Oncology Group performance status)3:
身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床している状態。
問218(実務)
患者の状態を考慮し、ゲフィチニブ単剤投与を検討している。投与の決定にあたり、考慮すべき患者情報として優先度が最も低いのはどれか。1つ選べ。
1 年齢
2 EGFR遺伝子変異
3 間質性肺炎の既往
4 再発非小細胞肺がん
5 ECOG PS 3
問219(物理・化学・生物)
前向で検討している薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 EGFRのチロシンキナーゼを特異的に阻害し、細胞内シグナル伝達を抑制する。
2 高分子型分子標的薬である。
3 がん細胞が分泌する増殖因子に結合して、その分解を促進する。
4 標的タンパク質のアミノ酸配列の違いにより有効性が異なる場合がある。
5 がん細胞中の変異した遺伝子に結合して、その遺伝子を切断する制限酵素としての働きをもつ。
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問218 解答 1
本患者は、ステージⅣの非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)である。ステージⅣの非扁平上皮がんの治療に対しては化学療法が中心となり、今回はゲフィチニブの投与が検討されている。
1 優先度は低い
年齢に関しては、65歳以上と65歳未満では、血漿中濃度及び副作用発現率並びにその程度に差が見られないという報告がある。よって、優先度は最も低いと考えられる。
2 優先度は高い
本剤は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がんにのみ適応があるため、EGFR遺伝子変異の有無に関する情報は、考慮すべき患者情報として優先度が高い。
3 優先度は高い
ゲフィチニブの重篤な副作用として間質性肺炎があり、間質性肺炎の患者に投与すると症状が増悪し、致死的となる症例が報告がされている。よって考慮すべき患者情報として優先度が高い。
4 優先度は高い
本剤は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がんにのみ適応があるため、本患者が再発非小細胞肺がんであるかどうかの確認は、考慮すべき患者情報として優先度が高い。
5 優先度は高い
ECOG PSとは、米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group:ECOG)が定めた患者の全身状態(Performance Status:PS)を表す指標である。ステージⅣの非小細胞肺がんでは、ECOG PSスコアにより治療方針(推奨される治療薬等)が異なる場合があるため、ECOG PSスコアは考慮すべき患者情報として優先度が高い。
<ECOG PS スコア>
患者の全身状態を日常生活動作レベルに応じて5段階(0〜4)で表した指標であり、患者の治療の適応基準の判断、治療効果の指標、予後予測因子としてがん医療の現場で用いられる。以下の表に5段階(0〜4)の内容を記載する。
問219 解答 1、4
ゲフィチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを特異的に阻害する小分子型分子標的薬である。細胞膜上に存在するEGFRにリガンドであるEGFが結合すると、EGFRの細胞内領域にあるチロシンキナーゼが活性化し、EGFRの自己リン酸化が起こる。これにより下流の細胞内シグナル伝達が促進し、がん細胞の増殖が促進される。
ゲフィチニブは、EGFRのチロシンキナーゼを特異的に阻害する小分子型分子標的薬であり、EGFRの自己リン酸化を抑制する。これにより、下流の細胞内シグナル伝達が抑制されることで、がん細胞の増殖を抑制する。
1 正
前記参照
2 誤
前記参照
3 誤
本剤に設問の作用があるという報告はない。
4 正
EGFR遺伝子には、遺伝子変異のない野生型と遺伝子変異のある変異型が知られている。これにより、ゲフィチニブの標的タンパク質であるEGFRは、野生型と変異型でアミノ酸配列が異なる。ゲフィチニブは、野生型EGFRよりも変異型EGFRに対してより低濃度でチロシンキナーゼ阻害活性を示す。つまり、ゲフィチニブはEGFRのアミノ酸配列の違いにより、有効性が異なる場合がある。
5 誤
本剤に設問の作用があるという報告はない。
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