薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 286,287
9歳男児。体重26 kg。咳を伴う40℃近くの発熱が2日間続いた。近医を受診し、アセトアミノフェン錠とセフカペンピボキシル塩酸塩錠が5日分処方された。3日間経過しても解熱傾向が見られず、夜も眠れないほどの乾いた咳が続いているため、総合病院に紹介され入院治療を行うことになった。喀痰のグラム染色で陽性菌も陰性菌も同定されなかった。胸部レントゲン検査で多発性のすりガラス状陰影を認めた。セフカペンピボキシル塩酸塩錠を中止し、以下の処方を開始した。
問286(病態・薬物治療)
この患者の入院時の血液検査の結果として、妥当なのはどれか。2つ選べ。
1 CRP増加
2 白血球数減少
3 赤血球沈降速度(赤沈、ESR)促進
4 β−D−グルカン陽性
5 抗ストレプトリジンO(ASO)抗体陽性
問287(実務)
処方変更後3日目には咳は軽快し解熱傾向を認めたものの、37.5℃前後の微熱が継続している。薬剤師が今後の治療方針を医師と確認した。その内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 ロキソプロフェンナトリウム水和物の追加投与
2 フルコナゾールへの変更
3 現在の処方薬による14日間の治療完遂
4 テオフィリンの追加投与
5 インフルエンザウイルス感染の追加検査
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問286 解答 1、3
本患者は最初、発熱と咳を主訴に受診し、アセトアミノフェン錠とセフカペンピボキシル塩酸塩錠が処方されたことから細菌感染による肺炎と診断されたと推測される。
しかしその後、治療効果が得られず、持続的な乾いた咳を主訴として再診し、検査の結果、喀痰のグラム染色で陽性菌も陰性菌も同定されなかった点、胸部レントゲン検査で多発性のすりガラス状陰影を認めた点、そして、セフカペンピボキシル塩酸塩錠を中止し、エリスロマイシン腸溶錠が処方された点から、マイコプラズマ肺炎と再診断されたと考えられる。
1 正
CRPは炎症性マーカーであるため、マイコプラズマ肺炎などの炎症性疾患では増加する。
2 誤
マイコプラズマ肺炎では、白血球数は正常もしくは増加することが多い。
3 正
赤血球沈降速度(赤沈、ESR)は炎症性マーカーであるため、マイコプラズマ肺炎などの炎症性疾患では増加する。
4 誤
β−D−グルカンは、真菌の細胞壁成分であるため、真菌感染症で上昇する。
5 誤
抗ストレプトリジンO(ASO)抗体は、A群β溶血性連鎖球菌などの溶血性連鎖球菌(溶連菌)が産生する毒素(ストレプトリジンO)に対する抗体であるため、溶連菌感染症で上昇する。
問287 解答 3
マクロライド感受性のマイコプラズマであれば、投与後2〜3日後で解熱傾向を認める。解熱傾向が認められれば、引き続きマクロライド系抗菌薬を推奨された期間(エリスロマイシン:14日間、クラリスロマイシン:10日間、アジスロマイシン:3日間)継続投与するとされている。本症例で処方された薬物がエリスロマイシンであり、「処方変更後3日目には咳は軽快し解熱傾向を認めたものの、37.5℃前後の微熱が継続している。」との記載から、処方薬による14日間の治療完遂が最も適切である。
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解説動画1 ( 09:11 )
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