薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 290,291
17歳男性。身長170 cm。断続的に続く腹痛と下痢を呈し、3ヶ月間で体重が60 kgから54 kgへと減少した。最近は、38℃前後の発熱を認めることがある。近医を受診し、内視鏡検査を行ったところ、回盲部と空腸から横行結腸にかけて非連続的な潰瘍病変が観察された。そこで、プレドニゾロン(50 mg/日)とメトロニダゾール(750 mg/日)による治療が開始された。なお、この患者はB型及びC型肝炎ウイルスには感染していない。
問290(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 潰瘍病変は、縦走潰瘍や敷石像が特徴的所見である。
2 粘膜層に限局した炎症が認められる。
3 赤血球沈降速度(赤沈、ESR)が遅延している。
4 中心静脈栄養による栄養療法は適応とならない。
5 合併症として、腸管の瘻孔や狭窄のおそれがある。
問291(実務)
治療開始後も症状改善が見られないため、10月中旬より入院してアダリムマブによる治療を開始することになり、患者の治療方針を医療チームで話し合うことになった。薬剤師がチームに提案することとして適切なのはどれか。2つ選べ。
1 抗アダリムマブ抗体の有無を検査すること。
2 流行に備えて、インフルエンザワクチンを接種すること。
3 胸部レントゲン検査を行い、結核感染の有無を調べること。
4 レジパスビル/ソホスブビル配合錠を投与すること。
5 抗ミトコンドリア抗体の有無を検査すること。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問290 解答 1、5
症例文より、17歳と比較的若年であること、断続的に続く腹痛と下痢などの症状、内視鏡検査において回盲部と空腸から横行結腸にかけての非連続的な潰瘍病変という所見を認めることなどから、本患者はクローン病であると推測される。
1 正
クローン病は、原因不明の非特異的な炎症性腸疾患(IBD)であり、消化管のすべての部位(口腔〜肛門)に非連続的な縦走潰瘍や敷石状病変が認められ、その病変は消化管壁の全層に及ぶ。また、本症では、腹痛や血便を伴わない下痢、発熱、体重減少などの症状が見られ、重篤な場合、腸管の瘻孔や狭窄などを引き起こすこともある。
2 誤
解説1参照。
3 誤
クローン病は、炎症性腸疾患であるため、炎症所見として赤血球沈降速度(赤沈、ESR)亢進、CRP(C反応性タンパク)上昇、白血球増多などがみられる。
4 誤
クローン病の治療では、消化管吸収が不良となるため、適切な栄療療法を行うことが重要である。栄養療法としては、経腸栄養法と中心静脈栄養法があり、基本的には経腸栄養法が選択される。ただし、重度な下痢症状、広範な小腸病変、腸管狭窄や大量出血などが認められる場合には、消化管への負担を避けるために中心静脈栄養法が選択される。
5 正
解説1参照。
問291 解答 2、3
1 誤
抗アダリムマブ抗体とは、アダリムマブ投与後に産生される抗体で、これが産生されることで本剤の効果を減弱させてしまう恐れがある。そのため、アダリムマブ投与前ではなく投与後に、抗アダリムマブ抗体の有無を検査するがある。
2 正
アダリムマブ投与下では、本剤の免疫力低下作用により、インフルエンザ感染症罹患による重篤化の可能性が高くなる。そのため、インフルエンザの流行時期には、インフルエンザワクチンの接種が推奨される。
3 正
アダリムマブの投与により、結核の悪化等が起こる可能性が報告されている。そのため、本剤投与前に、結核に関する十分な問診、及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査、胸部CT検査などを行うことにより、結核感染の有無を確認する必要がある。
4 誤
レジパスビル/ソホスブビル配合錠は、C型肝炎ウイルス治療薬である。本症例では、「C型肝炎ウイルスには感染していない」とあるため、レジパスビル/ソホスブビル配合錠の投与は適切ではない。
5 誤
抗ミトコンドリア抗体は、原発性胆汁性肝硬変の診断に用いられる自己抗体である。本患者はクローン病患者であるため、抗ミトコンドリア抗体の有無を検査する必要はない。
-
解説動画1 ( 11:42 )
解説動画2 ( 05:24 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿