薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 292,293

35歳女性。身長153 cm、体重40 kg。半年前に出産した。出産直後より暑がりになり、水をよく飲み、汗をたくさんかくようになった。1ヶ月ほど前から食欲はあるが、やせてきたと感じていた。また、起床時の顔や手のむくみ、動悸や手指の振戦も自覚するようになった。最近、家族から眼球が突出し、首が腫れていると指摘され、近医を受診した。その際の血圧は148/70 mmHg、脈拍は120回/分であった。

問292（実務）
この患者の治療薬として適切なのはどれか。２つ選べ。

１　プラゾシン塩酸塩錠
２　プロピルチオウラシル錠
３　レボチロキシンナトリウム錠
４　フロセミド錠
５　プロプラノロール塩酸塩錠


問293（病態・薬物治療）
薬物治療により自覚症状が改善した。治療前と比べて血液検査所見で認められる変化はどれか。２つ選べ。

１　白血球数の増加
２　赤血球数の増加
３　血清コレステロール値の上昇
４　空腹時血糖値の上昇
５　血中TSH値の上昇

REC講師による詳細解説！ 解説を表示

問292　解答　２、５

眼球突出、動悸や手指の振戦、首の腫れなどの症状から、本患者は、バセドウ病（甲状腺機能亢進症）であると考えられる。

１　誤
プラゾシン塩酸塩は、アドレナリンα1受容体遮断薬であり、高血圧症や前立腺肥大症などに用いられるが、甲状腺機能亢進症には用いられない。

２　正
プロピルチオウラシルは、甲状腺ホルモンの生合成を阻害することにより、甲状腺機能亢進症に用いられる。

３　誤
レボチロキシンナトリウムは、T4製剤であり、甲状腺機能低下症に用いられる。

４　誤
フロセミドは、ループ利尿薬であり、高血圧症やうっ血性心不全などに用いられるが、甲状腺機能亢進症には用いられない。

５　正
プロプラノロール塩酸塩は、アドレナリンβ受容体遮断薬であり、甲状腺機能亢進症における動悸などの症状を改善する。


問293　解答　３、５

バセドウ病では、甲状腺ホルモン（T3、T4）の過剰分泌により、体重減少、頻脈、発汗、手指の振戦、空腹時血糖値の上昇、血清コレステロール値の低下などの所見が認められる。また、T3、T4の過剰分泌に対する負のフィードバックにより、血中TSH値は低下している。
プロピルチオウラシルなどの薬物治療を行うと、上記の症状が改善されるため、空腹時血糖値の低下、血清コレステロール値の上昇、血中TSH値の上昇などが認められる。

解説動画１ ( 08:39 )  

※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です 

他の解説動画を見る