薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 308,309
29歳女性。全身性エリテマトーデスの診断を受け、入院して処方1による治療が行われ、その後、処方2による治療に切り替わることになった。薬剤師が患者と面談したところ、「治療が必要なのは理解しているが、ムーンフェイスの副作用が嫌なので積極的に治療を受ける気になれない」と落ち込んだ様子だった。
問308(法規・制度・倫理)
この患者は“治りたい”が“副作用は嫌”という葛藤を抱えている。このような患者への対応のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 患者が自分の病気や治療についてどのように考えているのか(解釈モデル)を聴く。
2 患者の不安な気持ちに共感し、ラポール(注)を構築する。
3 面談中はどんなときもにこにこしている。
4 患者が安心して話せるように、視線や態度に配慮する。
5 患者が自由に自分の気持ちを話せるように、開いた質問をする。
(注)ラポール:心理学用語で、お互いに信頼感で結ばれている関係のこと。
問309(実務)
薬剤師が話を聞いたところ、患者は結婚式を控えており、治療全般について抵抗感があることが分かった。この治療に関する患者への説明内容のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 治療中は摂取カロリーを通常より多めにする必要がある。
2 処方2の服用量は体調に応じて調節して良い。
3 不眠や不安などの精神症状が現れたら、医師又は薬剤師に相談する。
4 症状が改善し、処方2の処方量が減れば、ムーンフェイスの改善も期待できる。
5 処方2は、最低用量なので、副作用が生じる可能性は低い。
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問308 解答 3
治療に不安を抱いている患者に対する適切な対応は、良好な信頼関係(ラポール)の構築が大切である。良好な信頼関係を構築するためには、まず患者の話を傾聴し、不安な気持ちを共感してあげることから始まる。また、患者が安心して話せるように視線、態度(状況に応じた表情、相づちなど)にも配慮することが大切である。さらに、薬剤師が一方的に問いかけるばかりではなく、患者が自由に自分の気持ちを話せるように開いた質問をすることを心がけることが大切である。
1 適切
患者本人に対して治療についての考えや感情を聞くことで、患者に合わせた治療を行うことができるようになる。また、患者本人も治療に積極的に参加することができるようになり、アドヒアランスの向上にもつながる。
2 適切
患者とのラポールを構築するためには、まず患者の話を傾聴、共感することが大切になる。
3 不適切
患者の話を傾聴するときは、にこにこするだけではなく患者の話にあった(状況に応じた)表情で対応することが求められる。
4 適切
患者が安心して、話せるように程よくアイコンタクトや相づちを意識することが必要になる。
5 適切
患者が自由に話せるようにするためには、「はい」、「いいえ」で答えられない開いた質問を行うことが大切である。なお、「はい」、「いいえ」で答えられる質問を閉じた質問という。
問309 解答 3、4
本患者は、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され、プレドニゾロンによる治療を受けている。プレドニゾロンの副作用として食欲増進、不眠・不安といった精神異常、ムーンフェイスなどがある。プレドニゾロンの投与量は、患者の状態によって異なってくるが、症状が改善していくとプレドニゾロンの投与量を徐々に減らす治療(漸減療法)を行う。
1 誤
プレドニゾロンの副作用には食欲増進があるため、食事制限を行う必要がある。よって、摂取カロリーを多めにする必要があるという説明は不適切である。
2 誤
プレドニゾロンの服用量(投与量)は、医師の診断によって決定されるため、体調に応じて調節して良いという説明は不適切である。
3 正
不眠や不安などの精神症状はプレドニゾロンの副作用に該当するため、すぐに医師や薬剤師に相談するように説明することは適切である。
4 正
症状が改善することでプレドニゾロンの投与量が徐々に減少され、副作用のムーンフェイスも改善していく。よって、説明は適切である。
5 誤
プレドニゾロンの最低用量は、1日5 mgであるが、処方2は1日40 mg 処方されている。よって処方2は最低用量ではない。また、最低用量であっても副作用が生じる可能性は否定できない。
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