薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 316,317
68歳男性、肝硬変。低タンパク血症によると考えられる難治性の腹水が認められたため、高張アルブミン製剤(献血アルブミン20%静注)による治療が開始された。初回投与前の血清アルブミン濃度1.9 g/dLであり、投与後の目標血清アルブミン濃度は3.5 g/dLとされた。なお、この薬剤の容器には「特生物」の表示がある。
問316(実務)
この薬剤の使用に関する記述のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 過剰に蓄積した血管内水分の血漿膠質浸透圧を維持する目的で使用する。
2 感染症のリスクについて患者に説明する。
3 細菌が増殖しやすいので、残液は適切に廃棄する。
4 血清アルブミン濃度が目標値に達したかモニターする。
5 できるだけ短期間の投与にとどめる。
問317(法規・制度・倫理)
この薬剤を取り扱う薬剤師が行わなければならないこととして適切なのはどれか。2つ選べ。
1 鍵のかかる場所で保管する。
2 保管場所に白地に赤枠、赤字をもって「特生物」の表示を行う。
3 使用した患者の氏名及び住所、使用した薬剤の名称及び製造番号又は製造記号、使用年月日、その他必要な事項を記録する。
4 使用に関する記録を、その使用した日から少なくとも10年間保存する。
5 使用による感染症の発生について、危害の発生を防止するために必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告する。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問316 解答 1
1 不適切
低タンパク血症では血漿膠質浸透圧が低下し、血液中の水分が血管外へ漏出し浮腫(腹水など)が生じる。
本剤は、血中の膠質浸透圧を高め、過剰に蓄積した血管外の水分を血管内に移行させることで、循環血漿量を正常化する目的で使用する。
2 適切
本剤は特定生物由来製品である。特定生物由来製品は原材料に由来する感染症を完全に排除することができないため、当該製剤を患者に投与する際には感染症リスクについて説明することが適切である。
3 適切
本剤は、細菌の増殖が起こりやすいタンパク質であり、これに加えて保存剤が含有されていない。そのため、残液は細菌汚染の恐れがあるので使用せずに適切に廃棄する。
4 適切
本剤の投与前には、その必要性を明確に把握し、投与前後の血清アルブミン濃度と臨床所見の改善の程度を比較して効果の判定を行い、診療録に記載する。
5 適切
投与効果の評価は3日間を目途に行い、使用の継続を判断することとしている。
問317 解答 3、5
1 誤
特定生物由来製品について、医療機関等において鍵のかかる場所で保管するという規定はない。なお、鍵のかかる場所で保管しなければならないのは、毒薬や覚せい剤原料などである。
2 誤
特定生物由来製品について、保管場所への表示は義務づけられていない。なお、特定生物由来製品の直接の容器又は直接の被包には、白地に黒枠、黒字をもって「特生物」の表示を行うこととされている。
3 正
特定生物由来製品を取り扱う医療関係者は、特定生物由来製品の使用の対象者の氏名及び住所、使用した薬剤の名称及び製造番号又は製造記号、使用年月日、その他必要な事項を記録しなければならない。
4 誤
薬局の管理者又は病院、診療所もしくは動物診療施設の管理者は、特定生物由来製品の使用に関する記録を、その使用した日から起算して少なくとも20年間保存する必要がある。
5 正
医療関係者は、医薬品、医療機器又は再生医療等製品について、当該品目の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害もしくは死亡の発生または当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知った場合において保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない(医薬品・医療機器等安全性情報報告制度)。なお、報告の受理については独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に委託されている。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿