薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 理論問題 - 問 99
放射線と物質の相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ガイガー・ミュラー(GM)計数管は、アルゴンなどの不活性気体が放射線により電離することを利用して放射線を検出する。
2 γ線は光電効果を示すが、コンプトン散乱は示さない。
3 α線の電離作用の強さは、線源からの距離に反比例する。
4 β-線が原子核近傍を通過するときエネルギーの損失が起こり、そのエネルギーに見合ったX線が放射されることがある。
5 金属銀に放射線が作用すると、金属銀が酸化されて銀イオンになる。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
解答 1、4
1 正
ガイガー・ミュラー(GM)計数管は、アルゴン、ヘリウムなどの不活性気体に対して放射線を入射させ、生成したイオンが引き金になって起きた放電の回数を数えることによって放射線の強さを測定する測定器である。高エネルギーのβ線、γ線、X線の測定に用いられる。
2 誤
γ線が示す相互作用には、光電効果、コンプトン散乱、電子対生成がある。光電効果とは、低エネルギーのγ線が軌道電子の1つに全エネルギーを与えて消滅する際、電子を殻外に放出する現象のことである。
3 誤
電離作用とは、原子の軌道電子をはじきだし、電子と陽イオンを生成する作用のことである。比電離(単位長さあたりの電離作用の大きさ)と線源からの距離との関係は以下のブラッグ曲線で表される。α線は、線源からの距離が離れて速度が遅くなると比電離は増加し、止まる直前に急激に比電離が増加する。よって、α線の電離作用の強さは、線源からの距離に反比例ではない。
4 正
β-線が原子核近傍を通過するとき、核の電場によって減速され、エネルギーの損失が起こり、そのエネルギーに見合ったX線が放射されることがある。この現象を制動放射といい、放射されるX線を制動X線という。
5 誤
金属銀に放射線が作用しても、金属銀は酸化されないが、ハロゲン化銀に放射線が作用すると、銀イオンが還元されて金属銀が生成する。ハロゲン化銀は正の銀イオンと負のハロゲン化物イオンが結合した塩である。ここに光や放射線があたるとそれらのエネルギーを吸収して、負電荷を持つハロゲン化物イオンから、正電荷を持つ銀イオンへ電子の移動が起こり、銀原子とハロゲン原子が形成される光分解反応が起こる。この反応は以下の式で表される。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿