薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 264,265
薬剤師が特別養護老人ホームを訪問した時、施設の看護師から入所者が内服薬を服用しないので困っているとの相談を受けた。処方は朝食後にドネペジル塩酸塩錠10 mgを1錠であった。現状を踏まえ、主治医に対し次回からリバスチグミン経皮吸収型製剤への変更を提案した。
問264(実務)
薬剤変更を提案するにあたって、薬剤師が主治医に確認することとして、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 患者が錠剤を飲まない時に貼付し、両剤を併用すること
2 患者が軽・中程度のアルツハイマー型認知症であること
3 患者が過去に貼付剤によってかぶれたことがあるか
4 薬剤変更後、毎週の増量が必要なこと
5 患者に腎機能障害がないこと
問265(薬剤)
リバスチグミン経皮吸収型製剤の特徴として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 背部又は胸部に貼付したとき、リバスチグミンの吸収には貼付部位間で差が認められない。
2 繰り返し貼付することで血漿中濃度は定常状態に達する。
3 肝初回通過効果を受けない。
4 主たる吸収経路は、皮膚における汗腺や毛穴などの付属器官である。
5 急激な血漿中濃度の上昇が回避される。
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問264 解答 2、3
1 誤
リバスチグミンは、コリンエステラーゼ阻害薬であり、ドネペジル塩酸塩と同じ作用機序である。したがって、併用により作用を増強させる恐れがあるため、両剤を併用しないこととされている。
2 正
リバスチグミンは、軽・中程度のアルツハイマー型認知症の治療に用いられる薬剤である。したがって、患者が軽・中程度のアルツハイマー型認知症であることを主治医に確認することは適切である。
3 正
リバスチグミン経皮吸収型製剤の貼付により皮膚症状が現れることがある。したがって、患者が過去に貼付剤によってかぶれたことがあるかを確認することは適切である。
4 誤
通常、成人にはリバスチグミンとして、1日1回4.5 mgから開始し、原則として4週毎に4.5 mgずつ増量し、維持量として1日1回18 mgを貼付する。したがって、薬剤変更後、4週毎に増量が必要なことを主治医に確認する必要がある。
5 誤
リバスチグミンの消失は主に肝代謝である。したがって、患者に肝機能障害がないことを主治医に確認する必要がある。
問265 解答 4
1 正
背部、胸部又は上腕部に貼付したとき、リバスチグミンの吸収には貼付部位間で差が認められていない。
2 正
経皮吸収型製剤は、繰り返し貼付することで徐々に血漿中濃度が上昇し、やがて血漿中濃度は定常状態に達する。
3 正
肝初回通過効果とは、投与された薬剤が、全身循環血中に移行する前に肝臓で代謝を受けることである。経皮吸収型製剤は、皮膚を通して薬物が吸収され、薬物は直接全身循環血中に移行するため、肝初回通過効果を受けない。
4 誤
経皮吸収型製剤の主たる吸収経路は、皮膚における角質層である。皮膚における汗腺や毛穴などの付属器官は、角質層に比べ薬物吸収における有効面積が小さく、薬物吸収の寄与は少ない。
5 正
経皮吸収型製剤は、皮膚を通して薬物が徐々に吸収されるため、急激な血漿中濃度の上昇が回避される。
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