薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 理論問題 - 問 154,155

78歳女性。夫と2人暮らしであるが、半年前から物の置き忘れやしまい忘れをするようになった。3ヶ月前から誰もいない庭を指さして「子供たちが遊んでいる。」などと言うようになった。睡眠中に大声を出して、手足をばたつかせることがあるが、本人に自覚はない。心配した夫に連れられ病院を受診した。診察時、受け答えは良好であったが、歩行は小刻み様であった。日付や場所の見当識が一部曖昧であり、ミニメンタルステート検査は30点満点中23点であった。また、脳血流SPECTにより後頭葉の血流低下が認められた。

問154（病態・薬物治療）
この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。２つ選べ。

１　前頭葉に著明な萎縮が生じている。
２　パーキンソン症状が認められる。
３　脳梗塞によって二次的に発症した可能性が高い。
４　幻視やREM睡眠行動異常が認められる。
５　症状は階段状に悪化する。


問155（薬理）
この患者の症状改善を目的として使用される可能性のある薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。２つ選べ。

１　ブロモクリプチンは、線条体においてドパミンD2受容体を刺激することで、間接路のGABA作動性神経を抑制する。
２　ゾニサミドは、グルタミン酸AMPA受容体を刺激することで、ドパミン作動性神経を亢進させる。
３　カルビドパは、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼを阻害することで、レボドパの脳内移行を高める。
４　ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで、アミロイドβタンパク質の分解を促進する。
５　クロナゼパムは、γ−アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで、GABAによるCl－チャネルの開口を促進する。

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問154　解答　２、４

本患者の所見として、「日付や場所の見当識が一部曖昧」「物の置き忘れやしまい忘れをするようになった」などの認知機能の低下、「歩行は小刻み様」などのパーキンソン症状、「睡眠中に大声を出して、手足をばたつかせることがある」などのREM睡眠行動異常、「誰もいない庭を指さして子供たちが遊んでいると言う」などの幻視がみられること、そして脳血流SPECTにて後頭葉の血流低下を認めていることなどから、本患者はレビー小体型認知症であると推測される。

１　誤
前頭葉に著明な萎縮が生じる認知症は、前頭側頭型認知症である。

２　正
前記参照

３　誤
レビー小体型認知症は神経変性疾患であるため、脳梗塞によって二次的に発症した可能性は低い。

４　正
前記参照

５　誤
レビー小体型認知症は、緩徐に進行する認知症である。なお、症状が階段状に悪化する認知症は、脳血管性認知症である。


問155　解答　１、５

１　正
ブロモクリプチンは、線条体のドパミンD2受容体を刺激することで、間接路のGABA作動性神経を抑制し、パーキンソン症状改善作用を示す。

２　誤
ゾニサミドは、詳細な作用機序は不明であるが、B型モノアミンオキシダーゼ（MAOB）を阻害することで、ドパミン作動性神経を亢進させ、パーキンソン症状改善作用を示すと考えられている。

３　誤
カルビドパは、パーキンソン病に対してレボドパを投与する際に併用され、末梢の芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素を阻害することで、レボドパの脳内移行量を高め、パーキンソン症状改善作用を示す。

４　誤
ドネペジルは、中枢内のアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することで、アセチルコリン濃度を高め、認知機能低下の進行を抑制する。なお、アミロイドβタンパク質を減少させる薬物は、レカネマブである。

５　正
クロナゼパムは、γ−アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで、GABAによるCl－チャネルの開口を促進し、中枢神経細胞内にCl－を流入させて過分極を引き起こす。その結果、中枢神経が抑制されるため、REM睡眠行動異常に対する改善作用を示す。

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