薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 240,241
37歳女性。生後6ヶ月の男児あり。母乳哺育中。3ヶ月前に動悸、食欲亢進、体重減少が現れたため、かかりつけ医を受診したところ、甲状腺機能亢進が疑われ、精査の結果、バセドウ病と診断された。プロピルチオウラシル錠内服による治療が開始されたが、投与開始1ヶ月後の検査において、白血球数減少が認められたため、放射性同位体131Iを含む放射性医薬品(ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル)による治療に変更することになった。
問240(実務)
この放射性同位体131Iを含む放射性医薬品の服用前後の生活における注意点について、この患者への薬剤師の説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 服用1〜2週間前から、海藻類を含む食品などの摂取を増やしてください。
2 服用後も母乳哺育を継続することができます。
3 服用1〜2週間前から、ヨウ素含有うがい液の使用を避けてください。
4 服用後1週間は、子供との長時間の接触(添い寝など)は避けるようにしてください。
5 服用後も、洗濯やお風呂は同居の人と区別する必要はありません。
問241(衛生)
この患者の治療に用いる放射性同位体131Iを含む放射性医薬品に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、この放射性医薬品に含まれる131Iの物理学的半減期は8日、生物学的半減期は80日とする。
1 131Iの壊変方式はβ+壊変で、β+線とγ線を放出する。
2 131Iの実効半減期は、7.3日である。
3 この医薬品は、非密封小線源として治療に用いられる。
4 131Iは体内に吸収されると、甲状腺だけでなく骨にも集積する。
5 脳腫瘍の治療にも用いられる。
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問240 解答 3、4
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症に分類され、免疫異常により甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることでおこる疾患である。バセドウ病の治療には、薬物(抗甲状腺薬)治療、放射性ヨウ素内用療法、手術がある。本問の放射性同位体131Iを含む放射性医薬品(ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル)による治療は、放射性ヨウ素内用療法であり、甲状腺機能亢進症の他、甲状腺がんの治療にも用いられる。
1 誤
海藻類には甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素が多く含まれており、これらの食品を多く摂取するとヨウ化ナトリウムカプセル中の放射性ヨウ素(131I)の甲状腺への取り込みが抑制され、治療効果が十分に得られないことがある。そのため、海藻類を含む食品などの摂取を控えるよう指導するとともにヨウ素含有うがい液の使用を避けるように指導する必要がある。
2 誤
本剤は一部母乳中に排泄されるため、本剤服用後は授乳を避けるように指導する。
3 正
解説1参照
4 正
本剤は一部汗や唾液中に排泄され、本剤服用後1〜3週間は汗や唾液から微量の放射線が放出されるため、子供や妊婦と近距離(1メートル以内)、長時間の接触は避け15分以上子供は抱かないように指導する。また、入浴は最後に1人で行い、衣類は共用せず洗濯も分けて行うように指導する。
5 誤
解説4参照
問241 解答 2、3
1 誤
131Iはβ−壊変により、β−線を放出する。また、131Iはβ−壊変に伴いγ線も放出するため、β−線とγ線が放出される。
2 正
131Iの物理学的半減期が8日、生物学的半減期が80日であることから、実効半減期は次式で求めることができる。
上記より、実効半減期≒7.3日となる。
3 正
放射性物質を体内に入れることでがん病巣に照射する内部照射には、密封小線源治療と非密封小線源治療がある。密封小線源治療は、金属製の小さなカプセルで密封した放射性物質を体内に挿入して治療を行う方法である。また、非密封小線源治療は病巣に集積する性質をもつ放射性医薬品を経口薬や静脈注射により体内に取り込ませて行う。
ヨウ化ナトリウム(131I)カプセルは経口薬として用いられるため、非密封小線源治療として治療に用いられる。
4 誤
131Iは体内に吸収されると血中に移行し甲状腺に集積するが、骨への集積性は低い。
5 誤
ヨウ化ナトリウム(131I)カプセルは甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がんの治療に用いられるが、脳腫瘍の治療には用いられない。
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解説動画1 ( 08:37 )
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