薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 252,253
73歳女性。左前頭部が柔らかく腫張しているのを自覚し、かかりつけ医を受診した。腫瘤性病変を指摘され、精査加療目的で紹介入院となった。CT検査で頭蓋及び四肢に骨病変が認められた。骨髄検査の結果、単クローン性の形質細胞が37.0%であったことから多発性骨髄腫と診断され、以下のDLd(ダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン)療法が開始された。
問252(実務)
今回の薬物治療における薬剤管理として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ダラツムマブの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性流通管理システムへの薬剤師の登録が必要である。
2 レナリドミドの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性管理手順に従って、調剤及び管理上の責任を担う、責任薬剤師の登録が必要である。
3 ダラツムマブを使用する前に、肝炎ウイルス感染の有無を確認する必要がある。
4 レナリドミドは、服用しやすいように脱カプセルする必要がある。
5 デキサメタゾンは、帳簿への記載が必要である。
問253(薬理)
治療開始後、血清カルシウム値が12 mg/dLを超えたため、薬物を追加することとなった。追加する薬物の作用機序として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体を遮断する。
2 副甲状腺細胞のカルシウム受容体を遮断する。
3 破骨細胞のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する。
4 骨芽細胞のRANKL(NF−κB活性化受容体リガンド)の作用を阻害する。
5 小腸上皮細胞のビタミンD受容体を活性化する。
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問252 解答 2、3
1 誤
ダラツムマブの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性流通管理システムへの薬剤師の登録は不要である。適性流通管理システムは、薬剤の適正使用と適正流通管理を目的に製造販売業者が策定するものであり、流通管理基準を満たす薬剤師などの登録が必要である。現在、適性流通管理システムへの薬剤師の登録が必要な薬剤として、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)に用いるメチルフェニデート塩酸塩徐放錠(コンサータ®️)がある。
2 正
レナリドミドの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性管理手順に従って、調剤及び管理上の責任を担う、責任薬剤師の登録が必要である。レナリドミドは、サリドマイドと類似の化学構造をもち、催奇形性を有するため、胎児への薬剤暴露防止を目的とした適性管理手順の実施が義務付けられている。
3 正
ダラツムマブを使用する前には、肝炎ウイルス感染の有無を確認する必要がある。これは、ダラツムマブの投与により、B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎が現れることがあるためである。
4 誤
レナリドミドは、暴露防止のため、脱カプセルしてはならない。
5 誤
デキサメタゾンの薬剤管理において、帳簿への記載は不要である。
問253 解答 3、4
本患者は多発性骨髄腫に罹患しており、血清カルシウム値が12 mg/dLを超えていることから、多発性骨髄腫による高カルシウム血症であると考えられる。多発性骨髄腫による高カルシウム血症は、破骨細胞活性化による骨吸収が原因と考えられているため、本患者に追加する薬物は、破骨細胞の作用を抑制するビスホスホネート製剤やデノスマブであると考えられる。
1 誤
骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体を刺激する薬物として、テリパラチドがある。テリパラチドは、副甲状腺ホルモンのN末端フラグメントであり、骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体を刺激することで、前駆細胞から骨芽細胞への分化を促進し、骨芽細胞のアポトーシスを抑制する。
2 誤
副甲状腺細胞のカルシウム受容体を刺激する薬物として、シナカルセトがある。シナカルセトは、副甲状腺細胞のカルシウム受容体を刺激して、副甲状腺細胞から副甲状腺ホルモンの分泌を抑制することで、骨吸収を抑制する。
3 正
破骨細胞のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する薬物として、ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸などがある。ゾレドロン酸は、破骨細胞に取り込まれ、破骨細胞のメバロン酸経路におけるファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、破骨細胞のアポトーシスを誘導する。
4 正
骨芽細胞のRANKL(NF−κB活性化受容体リガンド)の作用を阻害する薬物として、デノスマブがある。骨芽細胞のRANKL(NF−κB活性化受容体リガンド)は、破骨細胞に発現するRANK(NF−κB活性化受容体)に結合することで、破骨細胞を活性化させる。デノスマブは、RANKLの作用を阻害することで、RANK/RANKL経路を阻害し、破骨細胞の活性化を抑制する。
5 誤
小腸上皮細胞のビタミンD受容体を活性化する薬物として、活性型ビタミンD3製剤であるカルシトリオールなどがある。カルシトリオールは、小腸上皮細胞のビタミンD受容体を活性化することで、カルシウムの吸収を促進させる。
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