薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 274,275

34歳既婚女性。高血圧症、逆流性食道炎治療中。かかりつけ薬局の薬剤師がいつもの薬をお渡しする際に副作用の発現状況などを確認していると、患者は半年前に結婚し、そろそろ子供が欲しいと思うようになったとのことであったが、患者背景については、薬歴が更新されていなかった。



問274（薬剤）
処方薬に関する記述のうち、誤っているのはどれか。１つ選べ。

１　エナラプリルは、消化管吸収の改善を目的としたプロドラッグである。
２　エナラプリルは、エステル部分の加水分解により代謝活性化される。
３　ランソプラゾールは、主にCYP2C19又はCYP3A4で代謝される。
４　ランソプラゾールは、苦味の軽減を目的としたプロドラッグである。
５　センノシドは、腸内細菌による代謝物が腸の蠕動運動を促進する。


問275（実務）
今後の薬物療法にあたり、妊娠の可能性があるこの患者に説明しておく情報はどれか。２つ選べ。

１　血圧コントロールのため、生活習慣や食習慣に気をつける。
２　現在服用中の血圧の薬は妊娠中でも服用可能である。
３　妊娠がわかったら、すぐに連絡してもらう。
４　逆流性食道炎の治療薬を市販の六君子湯などの漢方薬に変更する。
５　下剤は、一般用医薬品であれば、妊娠中でも服用可能である。

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問274　解答　４

１　正しい
エナラプリルは、エステル化により脂溶性を高め、消化管吸収の改善を目的としたプロドラッグである。体内のエステラーゼによりエステル部分が加水分解され活性代謝物のエナラプリラートとなり、アンギオテンシン変換酵素（ACE）を阻害することで血圧を低下させる。

２　正しい
解説１参照

３　正しい
ランソプラゾールは、主にCYP2C19又はCYP3A4により代謝される。

４　誤っている
ランソプラゾールは、臓器選択性の向上、作用の持続化などを目的としたプロドラッグであり、苦味軽減を目的としたプロドラッグではない。なお、苦味軽減を目的としたプロドラッグの例としては、クロラムフェニコールパルミチン酸エステルが挙げられる。

５　正しい
センノシドは、経口投与後腸内細菌により活性代謝物であるレインアンスロンに代謝され、レインアンスロンが大腸を刺激することにより、腸の蠕動運動を促進することで、瀉下作用を示す。


問275　解答　１、３

１　正
妊娠中は使用できない薬剤が多いことから、血圧コントロールのためには、薬剤のみに頼らず、生活習慣や食習慣に気をつけるよう情報提供する必要がある。

２　誤
現在服用中の血圧の薬であるエナラプリルマレイン酸塩錠は、妊婦への投与は禁忌である。なお、妊婦への投与が可能な降圧薬としては、メチルドパ、ニフェジピン、アムロジピン、ラベタロールなどが挙げられる。

３　正
妊娠中は使用できない薬剤、注意すべき薬剤が多く、本問の処方薬剤も妊婦への投与が禁忌である薬剤（エナラプリルマレイン酸塩錠）及び妊婦への投与に注意を要する薬剤（ランソプラゾール口腔内崩壊錠、センノシド錠）である。そのため、妊娠がわかったら、すぐに連絡してもらう必要がある。

４　誤
六君子湯などの漢方薬は、逆流性食道炎の治療薬であるランソプラゾール口腔内崩壊錠と同様、妊婦への投与については治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与することとされている。そのため、逆流性食道炎の治療薬を市販の六君子湯などの漢方薬に変更することは適切とは言えない。

５　誤
下剤は、医療用医薬品であっても、一般用医薬品であっても、基本的に妊娠中の投与に関しての安全性は確立していない。そのため一般用医薬品であれば、妊娠中でも服用可能と説明することは適切ではない。

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