薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 310,311
75歳女性。7日前に誕生日を迎えた。その少し前に、誕生日以降に使用できる医療保険証が郵送されてきた。70歳の夫と二人暮らしである。高血圧症と閉塞隅角緑内障の治療のため、ロサルタン錠とビマトプロスト点眼液を使用している。3日前、熱中症で救急病院に入院となった。入院後、寝つきが悪いとの訴えがあったため睡眠導入薬を追加することとなった。この病棟を担当している薬剤師は、患者を担当している研修医から睡眠導入薬について相談を受けた。患者からは、「寝つきが悪いので、早く眠れる薬が欲しい。でも、睡眠薬は効果が翌朝まで残ることがあると聞いたので不安だ。翌朝に影響の少ない薬がよい。」との希望があった。
問310(実務)
研修医に提案する薬剤として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 エスゾピクロン錠
2 ジフェンヒドラミン塩酸塩錠
3 ニトラゼパム錠
4 フルニトラゼパム塩酸塩カプセル
5 ラメルテオン錠
問311(法規・制度・倫理)
この女性の夫は、自身が利用しているかかりつけ薬局を訪れた。夫は薬剤師に、妻の入院や妻宛てに郵送された医療保険証のことなどを相談した。その医療保険証の医療保険制度に関する薬剤師の説明内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 所得により医療費の窓口負担割合が異なります。
2 運営主体は全国健康保険協会です。
3 保険料の支払いは免除されます。
4 65歳以上75歳未満の方は一定の障害と認定された場合、加入することができます。
5 当該制度の加入者は高額療養費制度を利用できません。
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問310 解答 1、5
患者は翌朝に影響の少ない睡眠導入薬を希望しているため、作用時間(半減期)の短い薬を提案すべきである。本設問では、エスゾピクロン錠とラメルテオン錠が該当する。
1 正
エスゾピクロン錠は超短時間型の催眠薬であるため、本患者に適している。なお、本剤は抗コリン作用を有するため急性閉塞隅角緑内障には禁忌であるが、閉塞隅角緑内障の本患者への使用は問題ないと考えられる。
2 誤
ジフェンヒドラミン塩酸塩錠は第一世代の抗ヒスタミン薬であり、医療用医薬品としては睡眠導入の目的での使用はしない。また、本剤は強い抗コリン作用を有するため閉塞隅角緑内障の患者には禁忌である。したがって、本剤は適していない。なお、本剤は、一般用医薬品では睡眠改善薬として、一時的な不眠症状に用いられることがある。
3 誤
ニトラゼパム錠は中時間型の催眠薬であるため、本患者には適していない。
4 誤
フルニトラゼパム塩酸塩カプセルは中時間型の催眠薬であるため、本患者には適していない。
5 正
ラメルテオン錠は作用時間(半減期)が短く、不眠症における入眠困難の改善に用いられるため、本患者に適している。
問311 解答 1、4
本設問の女性は75歳の誕生日を迎え、後期高齢者医療制度の対象者となったため、郵送された医療保険証は後期高齢者医療制度の被保険者証である。
1 正
後期高齢者医療制度における一部負担金の割合は、原則1割であるが、所得額が一定額以上の場合は2割、所得額が現役並みの場合は3割となる。
2 誤
後期高齢者医療制度の運営主体は、都道府県単位で設置された後期高齢者医療広域連合である。なお、全国健康保険協会は被用者保険の運営主体の1つである。
3 誤
後期高齢者医療制度において、保険料の支払いは必要である。
4 正
後期高齢者医療制度に加入できるのは、後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者、及び65歳以上75歳未満で後期高齢者医療広域連合の障害認定を受けた者である。
5 誤
後期高齢者医療制度の加入者は、高額療養費制度を利用できる。なお、後期高齢者医療制度に限らず、被用者保険や国民健康保険の加入者であれば高額療養費制度を利用できる。
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