薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 316,317
87歳男性。独居。日常生活に不安があるとのことで、近所に住んでいる娘が相談のため健康サポート薬局を訪れた。娘によると、男性の身体状態は比較的安定しているが、自宅は衣服が脱ぎっぱなしで、ゴミが散乱するなど以前より雑然としているとのこと。さらに、薬の飲み忘れがあり、同じことを何度も繰り返し話す、受診日を忘れることがあるとのことだった。1年ほど前に医師からは認知機能の低下が疑われると言われている。現時点でこの男性は要介護認定(要支援を含む)を取得していない。
問316(実務)
薬剤師がこの時点で家族や関係者に提案可能な内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 父親の行動について、医師に改めて認知機能の検査をしてもらうように提案した。
2 低下した認知機能を元に戻す薬があるので、医師に相談するよう提案した。
3 認知症の進行とともに徘徊や転倒のリスクも増大するので、ベッドに拘束して身体活動を抑制するように伝えた。
4 認知症の家族会を紹介し、同じような問題を抱えている方の助言を聞いてみてはどうかと提案した。
5 物忘れ防止のために、セント・ジョーンズワートの服用を勧めた。
問317(法規・制度・倫理)
その後、父親の症状の悪化により家族の介護の負担が大きくなったため、薬剤師は家族に要介護認定の取得を提案することとした。薬剤師が理解しておくべき認定取得の仕組みとして適切なのはどれか。2つ選べ。
1 要介護認定の申請窓口はかかりつけの医療機関である。
2 要介護認定の審査では医師の意見書は必要ではない。
3 認定審査はコンピューターによる1次判定と介護認定審査会による2次判定を経て行われる。
4 最終判定として、認定調査員による心身の状況に関する面接調査が行われる。
5 介護認定審査会の委員は保健・医療・福祉に関する学識経験者で構成される。
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問316 解答 1、4
1 正
認知機能の低下(認知症)は、早期発見・早期治療により、その進行を抑えることができるため、設問の提案は適切である。
2 誤
現在、低下した認知機能を元に戻す医薬品は承認されていない。認知症に適応のある医薬品は、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、レカネマブであるが、いずれも認知症症状の進行抑制である。したがって、設問の提案は不適切である。
3 誤
一般高齢者に比べ認知症高齢者は、認知症の進行とともにできないことが増えることによりストレスや不安を抱えることで徘徊のリスク、転倒のリスクのいずれも増大する。しかし、そのリスクの回避方法としてベッドに拘束等の身体拘束は認知症患者が感情的になり暴れたり、逃げ出そうとしたりして、怪我などにつながる恐れがあるため、設問の提案は不適切である。
4 正
認知症患者が生活を行う際に、家族や関係者の理解及びサポートが不可欠であるが、介護疲れや介護ストレスなどの負担も大きいため、認知症の家族会を紹介し、患者本人、家族、関係者の心理的状態の安定化を図ることは有効であるため、設問の提案は適切である。
5 誤
セント・ジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、気分の落ち込みを和らげうつ症状や不眠の改善を期待して摂取されることはあるが、物忘れ防止などの記憶力改善に有用であるというエビデンスは不十分であるため、設問の提案は不適切である。
問317 解答 3、5
1 誤
介護保険の認定の申請は、保険者である市町村又は特別区に対して行う。
2 誤
介護保険の認定の審査において、認定調査員の訪問調査や面接による心身状況の調査結果に加えて、主治医の意見書が必要であり、市町村又は特別区が主治医に意見書を依頼する。主治医がいない場合には、市町村又は特別区の指定医の診察を必要とする。
3 正
介護保険の認定の審査において、認定調査員の調査結果、主治医の意見書に基づきコンピューターによる1次判定を行う。その後、1次判定結果等に基づき、介護認定審査会による2次判定が行われる。
4 誤
認定調査員の面接による心身状況の調査結果に基づき、コンピューターによる1次判定を行うため、認定調査員の面接調査は最終判定ではなく1次判定の前に行う。
5 正
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解説動画1 ( 05:28 )
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