薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 理論問題 - 問 100
フェノール、パラオキシ安息香酸及びトルエンを含む混合物試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。このことに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。なお、HPLCの分析条件は以下のとおりである。
分析条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:270 nm)
カラム:内径4.6 mm、長さ15 cmのステンレス管に粒径5 µmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相:pH7.0の0.1 mol/Lリン酸塩緩衝液/メタノール(3:1)混液
1 使用したHPLCは順相クロマトグラフィーである。
2 3つの化合物のうち、最後に溶出するのはトルエンである。
3 カラム温度を高くするとピーク高さは大きくなり、ピーク面積は減少する。
4 パラオキシ安息香酸の保持時間を長くするには、移動相中の緩衝液のpHを低くする。
5 トルエンの保持時間を長くするには、移動相中のメタノールの比率を高くする。
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解答 2、4
クロマトグラフィーとは、固定相と移動相との物質の親和性の差を利用して混合物の分離を行う方法である。分離対象物質が移動相の流れによって運ばれて固定相の表面を通過する際、固定相と分離対象物質との間の親和性が強い場合、親和性が存在弱い場合と比べて、物質の移動速度が遅くなる。
1 誤
本問で使用したHPLCは固定相にオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルが用いられているため、逆相クロマトグラフィーである。なお、順相クロマトグラフィーでは固定相にシリカゲルなどを用いる。
2 正
オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルは、極性が低い固定相であるため、極性が低い物質と強い親和性を示す。そのため、分離対象物質の中で最も極性の低いトルエンが最後に溶出する。

3 誤
カラム温度を高くした場合、クロマトグラムのピーク高さは変動する。一方、ピーク面積は物質の量に比例するためカラム温度を高くしてもピーク面積は変化しない。
4 正
逆相クロマトグラフィーにおいて、パラオキシ安息香酸の保持時間を長くするには、極性の低い分子形の割合を増加させればよい。パラオキシ安息香酸は酸性化合物であり、移動相中の緩衝液のpHを低くすると分子形の割合が増加するため保持時間を長くすることができる。
5 誤
逆相クロマトグラフィーにおいて、トルエンの保持時間を長くするには移動相中のメタノールの比率を低くすればよい。本問で用いられている移動相のメタノール比率を低下させると、移動相の極性が増加する。その結果、極性の低いトルエンは固定相へ分配されやすくなり、固定相との親和性が強くなる。そのため、トルエンの保持時間は長くなる。
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解説動画1 ( 26:08 )
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