薬剤師国家試験 平成24年度 第97回 - 一般 実践問題 - 問 288,289
75歳男性。数年前の健康診断でPSAがやや高値(5.1 ng/mL)であったが、自覚症状もないため、放置していた。最近になり、腹圧をかけないと尿が出なくなり、血尿が出現したため、泌尿器科を受診した。また、腰痛も自覚するようになった。
【検査所見】
直腸診により、前立腺は栗の実大であり、左右は非対称、また、一部に硬結が触知された。
腫瘍マーカー検査:PSA 40 ng/mL
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)12 ng/mL
(正常値3 ng/mL以下)
MRI検査:所属リンパ節の腫大が認められた。
骨シンチグラフィー検査:骨盤及び腰椎に硬化性病変が認められた。
問288(病態・薬物治療)
本症例に関する記述のうち、適切でないのはどれか。2つ選べ。
1 本症例は男性ホルモン依存性の疾患である。
2 本疾患は前立腺外腺の腫瘍化が主な原因である。
3 PSAの高値は確定診断として用いられない。
4 放射線療法は適応とならない。
5 前立腺全摘除手術を行った後に薬物療法を行う。
問289(実務)
この患者に対して、初めて以下の薬剤が処方された。この患者に対する服薬指導の内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 発熱、乾性咳嗽、全身倦怠感、呼吸困難の増悪が現れた場合には、服薬を継続して次回受診時に医師にその旨を伝えるように指導した。
2 この処方薬を服用後、14日間休薬し、これを1クールとして服用を繰り返す必要があることを説明した。
3 この薬は性腺刺激ホルモンの作用を弱める薬であることを説明した。
4 少なくとも1ヶ月に1回、定期的に肝機能検査を行う必要性を説明した。
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問288 解答 4、5
検査所見において、直腸肥大、硬結が認められ、血液検査の結果、PSAが40 ng/mL(正常値4.0 ng/mL以下)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が12 ng/mL(正常値3 ng/mL以下)と高値を示していることより、本症例は前立腺がんであると推察される。前立腺がんは病期によって、早期がん(がんが前立腺に限局している限局がん)、中期がん(がんが前立腺被膜を越えて浸潤している浸潤がん)、進行期がん(がんが骨・リンパ節に転移している転移がん)に大別される。本症例は、排尿障害、血尿、腰痛などの症状が現れていることや、硬化性病変、リンパ節の腫大が認められていることから、進行期がんであると考えられる。
1 適切
前立腺がんの増殖や転移には、アンドロゲン(男性ホルモン)が関与しており、前立腺の外腺(辺縁領域)が腫瘍化する。
2 適切
解説1参照
3 適切
PSAの高値は、前立腺肥大症でも示すことがあるため、本症の確定診断として用いることはできない。なお、前立腺がんの確定診断には前立腺針生検が用いられる。
4 不適切
放射線療法は、前立腺がんのみならず、前立腺周辺の転移している組織のがんも治療できるという利点があるため、本症例には放射線療法が適用される。
5 不適切
前立腺全摘除手術は、早期または中期がんに対して行うが、本症例のような進行期がんに対しては行わない。なお、進行期がんに対しては、手術より薬物療法が優先される。
問289 解答 4
1 誤
フルタミドは副作用として、重篤な肝障害や間質性肺炎を起こすことがあるため、フルタミド服用中に全身倦怠感や発熱、乾性咳嗽、呼吸困難の増悪などが現れた場合には、服薬を中止し、直ちに受診するように指導する。また、少なくとも1ヶ月に1回、定期的に肝機能検査を行う必要がある旨を説明する。
2 誤
フルタミドは、1日3回毎食後に経口投与し、休薬期間は設定されていない。
3 誤
フルタミドは、アンドロゲン受容体を遮断し、男性ホルモンの作用を弱める薬である。なお、設問は、LH−RH誘導体製剤(リュープロレリンなど)の記述である。
4 正
解説1参照。
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解説動画1 ( 08:25 )
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