薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 196,197
60歳男性。2年前に拡張型心筋症と診断され、その後、内服加療中だったが、症状が悪化し、夜間就寝中に呼吸苦が出現したため、救急外来を受診し、慢性心不全の急性増悪の診断で入院することとなった。この患者に対して、フロセミドとドブタミン塩酸塩の注射剤が投与されることになった。
問196(実務)
フロセミド注射液とドブタミン塩酸塩注射液の添加物とpHを以下に示す。この患者へのフロセミド注射液の投与に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ドブタミン塩酸塩注射液と混合してワンショット静注する。
2 ドブタミン塩酸塩注射液とともに注射用水に希釈して点滴静注する。
3 ドブタミン塩酸塩注射液とは別に静脈内投与する。
4 高カリウム血症に注意して投与する。
5 不整脈に注意して投与する。
問197(物理・化学・生物)
腎臓のヘンレ係蹄上行脚におけるNa+、Cl−の再吸収により、髄質間質に高浸透圧が形成される。
生理的状態における髄質間質の塩化ナトリウム(式量:58.4)濃度は29 g/L、尿素(分子量:60.1)濃度は12 g/Lである。これらの溶質が形成する浸透圧(Pa(N/m2))に最も近いのはどれか。1つ選べ。ただし、間質の体液は理想状態にあり、気体定数は8.31(J・mol−1・K−1)、体液は37℃とし、塩化ナトリウムは完全に解離状態にあるとする。
1 1.8×104
2 1.8×105
3 3.1×105
4 1.8×106
5 3.1×106
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問196 解答 3、5
1 誤
フロセミドは酸性薬物であるため、pHの低い酸性注射液に混合するとフロセミドが析出することがある。そのため、フロセミド注射液とドブタミン注射液(pH:2.7〜3.3)は、混合しない。
2 誤
解説1参照
3 正
フロセミド注射液とドブタミン注射液を併用する場合、ドブタミン塩酸塩注射液とは別にフロセミド注射液を静脈内投与または筋肉内投与する。
4 誤
フロセミドを投与することにより、低カリウム血症を起こすことがあるため、フロセミド注射液を投与する際、低カリウム血症に注意する必要がある。
5 正
フロセミドを投与することにより、低カリウム血症を伴う心室性不整脈があらわれることがあるので、フロセミド注射液を投与する際、不整脈に注意する必要がある。
問197 解答 5
濃度29 g/Lの塩化ナトリウム(式量:58.4)の容量モル濃度は、29/58.4 mol/L≒0.5 mol/L、濃度12 g/Lの尿素(分子:60.1)の容量モル濃度は、12/60.1 mol/L≒0.2 mol/Lである。
「塩化ナトリウムは完全に解離状態にあるとする。」とあることから、解離度αは1、塩化ナトリウムは2つに解離することからnは2である。また、「体液は37℃」とあることから、絶対温度Tは273+37=310 Kである。
塩化ナトリウムは電解質であるため、③式、④式より以下のようにオスモル濃度を求めることができる。
i=1+α(n-1)
=1+1(2-1)=2
m=i・C
=2・0.5 mol/L=1 mol/L
尿素は非電解質であるため、②式より以下のようにオスモル濃度を求めることができる。
m=0.2 mol/L
間質の体液のオスモル濃度(塩化ナトリウムによるオスモル濃度と尿素によるオスモル濃度の和)は、1+0.2=1.2 mol/Lである。
これらのことから、①式より以下のように浸透圧Πを求めることができる。
Π=R・T・m
=8.31 J・mol−1・K−1 ・310 K・1.2 mol/L
=8.31 N・m・mol−1・K−1 ・310 K・1.2 mol/0.001 m3
≒3.1×106 N/ m2
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