薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 204,205
65歳男性。腰痛がひどいため、ガドテル酸メグルミン注射液を用いて造影検査を実施した結果、椎間板ヘルニアと診断され、以下の薬剤が処方された。
問204(実務)
この患者に対する情報提供の内容として、適切でないのはどれか。2つ選べ。
1 造影検査の数日後までに、発熱、発疹、悪心、血圧低下、呼吸困難等が現れたときには、速やかに主治医に連絡する。
2 処方1より、脱力感、ふらつき、眠気等が発現することがあるので、車の運転は控える。
3 処方1の薬の作用が減弱するので、クロレラの摂取を控える。
4 処方2により、光線過敏症を発現することがあるので、本剤を使用中及び使用後も当分の間、外出時には貼付部を衣服やサポーターなどで遮光する。
5 処方3の薬の作用が減弱するので、グレープフルーツジュースの摂取を控える。
問205(物理・化学・生物)
ガドテル酸メグルミンは代表的なMRI用造影剤である。次の記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 MRI装置は、円筒形の強力な磁石とラジオ波の発振器及び受信器からなる。
2 1Hのように核スピンが1/2の核種は、外部磁場に対して2通りの配向をとる
3 ガドテル酸メグルミンは、ガドリニウムイオン(Gd3+)にメグルミンを配位させたキレート製剤である。
4 Gd3+は主として周辺に存在する水素原子核の縦緩和時間(T1)を延長する。
5 臓器や器官が骨に囲まれていても、MRIでは内部画像を得ることができる。
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問204 解答 3、5
1 適切
ショックやアナフィラキシー様症状等を引き起こす可能性があるため、発熱、発疹、血圧低下、呼吸困難等が現れた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指導する必要がある。
2 適切
エペゾリンは筋弛緩剤として用いられる。作用機序は、脊髄反射の抑制によるものであり、副作用として脱力感、ふらつき、眠気などがある。
3 不適切
クロレラはビタミンKが大量に含まれている健康食品だが、エペリゾン服用中に摂取を控える必要はない。ビタミンKは、ワルファリンの抗血栓作用を減弱する効果が有名である。
4 適切
ケトプロフェンの副作用として、光線過敏症(発疹・発赤、かゆみ、むくみ、水疱など)、アナフィラキシー様症状、ぜんそく発作の誘発などが知られている。
5 不適切
ジクロフェナクナトリウムは主にCYP2C9によって代謝される。グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害するため、ジクロフェナク服用中に摂取を控える必要はない。
問205 解答 解なし(国家試験では4)
本問は、国家試験後に行われた問題検討委員会において「誤りがあると判断された問題」として以下のように記載された。
「選択肢3に関して、ガドテル酸メグルミンでは、ガドテル酸のGd3+にDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン四酢酸)が配位しており、メグルミンが配位しているのではない。従って、選択肢3は誤りであり、正解は3及び4となる。選択肢1に関しても、磁石が円筒形であると決まっているわけではないので、必ずしも正しいとはいえない。全体的に考えて、廃問とすべき問題である。」
上記のことから、本サイトの解説では解なしとする。
1 適切
MRIはNMRと同じ原理に基づいており、波長の長い電磁波であるラジオ波を用いるのが特徴である。MRI装置は、円筒形の強力な磁石とラジオ波の発振器及び受信器などから構成される。
2 適切
外部磁場の中で核がとりうる方向の数はスピン量子数Iによって決まる(2I+1)。1Hように核スピン(量子数)が1/2の核種は2 × 1/2 + 1 = 2通りの配向をとる。
3 不適切
ガドテル酸メグルミンは以下のような構造である。メグルミンはガドテル酸を塩にするために加えられているものであり、ガドリニウムイオン(Gd3+)に対して配位はしていない。Gd3+に配位しているのは構造中のDOTA部分である(下図参照)。
4 不適切
MRIにおける画像は、生体内の水分子の水素原子核(プロトン)から得られる信号(MR 信号)によって作られる。各組織のMR 信号は主に、その組織のプロトンの密度や緩和時間に依存するが、Gd(ガドリニウム)系MRI 用造影剤に含まれるGdイオンはプロトンの緩和時間を短縮させる効果が高く、広く用いられている。
5 適切
MRIの特徴は、X線や超音波では測定できない臓器や器官の画像処理ができ、安全性が高いことである。水(プロトン)がほとんど存在しない骨などでは信号がないため、骨に囲まれている頭部や脊髄などの画像処理に適している。
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