薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 206,207
58歳女性。呼吸器感染症。肺炎球菌が同定され、注射用ピペラシリンナトリウムが処方された。
問206(実務)
注射用ピペラシリンナトリウムに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 最小発育阻止濃度又はそれに近い濃度で殺菌的に作用する。
2 腎尿細管分泌の阻害によりメトトレキサートの腎排泄を遅延させる。
3 主に肝臓で代謝されるため肝障害のある患者には禁忌である。
4 トブラマイシンと併用する場合は、配合変化を避けるため別経路で投与する。
5 溶解後は速やかに使用する。
問207(物理・化学・生物)
ピペラシリン(A)の構造に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 Aの部分構造BはL−メチオニンとD−バリンで構成されている。
2 Bの骨格Cをセファムとよぶ。
3 Cの左側に存在する環状アミドをラクタムとよぶ。
4 ペニシリン系抗生物質に対する耐性菌が産生するβ−ラクタマーゼは、Aの四角で囲んだ部分に存在するアミド結合を切断する。
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問206 解答 3
1 正しい
β−ラクタム系抗生物質は、真正細菌の細胞壁の主要成分であるペプチドグリカンを合成する酵素(ペニシリン結合タンパク)と結合し、その活性を阻害する。その結果、最終的には溶菌を起こして死滅する(殺菌作用)。
2 正しい
本剤はメトトレキサート(抗がん剤)の尿細管分泌を阻害し排泄を遅延させ、メトトレキサートによる副作用を増強するおそれがあるため、両薬剤は併用注意である。
3 誤っている
本剤は、主に腎臓から排泄されるため、高度の腎障害患者への投与は慎重投与となっていため禁忌ではない。本剤の投与が禁忌となるのは、ショックの既往歴のある患者や伝染性単核球症の患者である。
4 正しい
アミノグリコシド系抗生物質(トブラマイシン等)と配合すると、アミノグリコシド系抗生物質の活性低下を来すので、本剤と併用する場合にはそれぞれ別経路で投与する必要がある。
5 正しい
本剤は、用時溶解して用いる凍結乾燥製剤であり、加水分解等の反応により有効成分が分解しないよう溶解後は速やかに使用する。なお、やむを得ず保存を必要とする場合でも冷蔵庫中(約5 ℃)に保存し、24時間以内に使用する。
問207 解答 3、4
1 誤
L−システインとD−バリンから構成されている。ヒトのタンパク質を構成する20種類のL−アミノ酸はシステインを除き(S)の絶対立体配置を有する。D−バリンは特殊なアミノ酸である。
2 誤
骨格Cはペナム骨格である。なお、不飽和結合(アルケン)があるとペネム骨格となる。
3 正
環状アミドをラクタムという。四員環がβ−ラクタム、五員環がγ−ラクタム、と定義されている。
4 正
耐性菌が産生するβ−ラクタマーゼは、その名の通りβ−ラクタムのアミド結合を切断し、活性を消失させる。
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