薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 208,209
48歳男性。腎移植後、拒絶反応予防のため、タクロリムス水和物顆粒剤を1回5 mgで1日2回経口投与されている。
問208(実務)
タクロリムスに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 顆粒剤からカプセル剤への切り換えに際しては血中濃度をモニターし、吸収変動がないことを確認する。
2 血液中で多くは赤血球画分に分布する。
3 フェノバルビタールの併用により血中濃度が上昇する。
4 乾燥弱毒生風疹ワクチンとの併用は禁忌である。
5 スピロノラクトン投与中の患者には禁忌である。
問209(物理・化学・生物)
タクロリムス水和物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 テトラサイクリン系抗生物質に分類される。
2 L−プロリンを含む。
3 テトラヒドロフラン環を含む。
4 四角で囲んだ三置換アルケンの立体化学はEである。
5 強アルカリ性で安定に存在する。
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問208 解答 3
タクロリムスの薬物動態に関する問題である。
1 正しい
剤形の変更によるバイオアベイラビリティーの同等性が確認されていない場合は、血中濃度を測定し吸収変動がないことを確認する必要がある。
2 正しい
血液中で多くは赤血球画分に分布する。そのため血中濃度モニタリング(TDM)を実施する際においては、血球中薬物濃度が高く無視できない場合には、全血中の薬物濃度を測定する必要がある。なお、他の多くの薬物では全血液中の薬物濃度の測定は技術的に困難であり、血漿中薬物濃度あるいは血清中薬物濃度を測定し、血中薬物濃度としている。測定法には免疫学的な方法や高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)などがある。
3 誤っている
タクロリムスはCYP3A4によって代謝される。CYP3A4はエリスロマイシンやアゾール系抗菌剤によって阻害され、リファンピシン、カルバマゼピン、デキサメタゾン、フェニトイン、フェノバルビタール等によって誘導される。そのため、フェノバルビタールによる酵素誘導によってタクロリムスの代謝が促進され、作用が減弱する。
4 正しい
タクロリムスは免疫抑制作用を有しているため、ワクチン接種により風疹発症の危険性が高まるため併用禁忌である。
5 正しい
タクロリムスの副作用として、高カリウム血症が発現することがあるため、カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレン)の併用あるいはカリウムの過剰摂取を行ってはいけない。そのため、頻回に血清カリウムの測定を行う必要がある。
問209 解答 4
1 誤
タクロリムスはマクロライド系免疫抑制薬である。なお、12員環以上の大環状のラクトンを有する有機化合物群をマクロライドと呼ぶ。
2 誤
タクロリムスは、含窒素6員環化合物であるピペリジン環を有する。なお、プロリンは含窒素5員環(ピロリジン)を有する化合物である。
3 誤
タクロリムスは、含酸素6員環化合物であるテトラヒドロピラン環を有する。なお、テトラヒドロフラン環は含酸素5員環の化合物である。
4 正
タクロリウムの下図の構造において、矢印で記載した置換基がそれぞれ優先順位の高い置換基である。よって、タクロリムスのアルケンはE体である。
5 誤
タクロリウムの構造中のエステルやアミドは、強アルカリ条件にて加水分解される。
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