薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 212,213
40歳女性。糖尿病治療を行っていたところ、下肢のしびれの訴えがあり、八味地黄丸エキス顆粒が処方された。
問212(実務)
八味地黄丸エキス顆粒の使用法及び使用上の注意に関する記述のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 本剤には附子が含まれているので、小児等には慎重に使用する。
2 身体を温める作用があるので、冷えのある患者に使用する。
3 流早産の危険性があるので、妊婦には使用しないことが望ましい。
4 主な副作用は、胃部不快感、食欲不振、腹痛などの消化器症状である。
5 高血圧症の患者には使用してはならない。
問213(物理・化学・生物)
八味地黄丸の構成生薬の1つである附子は減毒のために高圧蒸気処理による修治が行われる。この修治で引きおこされる主な化学反応はどれか。1つ選べ。
1 酸化反応
2 還元反応
3 加水分解反応
4 アルキル化反応
5 脱水反応
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問212 解答 5
漢方薬の処方に関する問題である。八味地黄丸(ハチミジオウガン)エキスは、地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)から製造される。本問では、主にブシ(アコニチン)の作用について問われている。その他の7成分の作用は以下の通りである。
ジオウ:主成分はイリドイド配糖体である。
サンシュユ:主成分はロガニン(イリドイド配糖体)であり、中枢神経系の興奮や鎮痛剤の作用を持つ。
サンヤク:ヤマイモの皮を薄く剥いて乾燥したものであり、デンプン分解酵素のジアスターゼ(アミラーゼ)や活性酸素の除去するカタラーゼを豊富に含む。滋養強壮、止瀉、鎮咳などに効果がある。
ブクリョウ:乾燥重量の93%が多糖類のパキマンであり、利尿作用、滋養作用などがある。
タクシャ:四環性トリテルペノイドのアリソールが成分であり、利水、止渇に効果がある。
ボタンピ:ペオノールなどが成分として含まれており、消炎鎮痛効果がある。
ケイヒ:ニッケイやその他同属植物の樹皮を乾燥したもの。精油成分やケイヒアルデヒドなどを含有する。健胃、発汗、解熱などの作用がある。
1 適切
ブシはトリカブト属の塊根を使った漢方薬であり、ブシジエステルアルカロイドであるアコニチン、ジェサコニチン、ヒパコニチン、メサコニチンなどのアルカロイドを含む。強心作用、利尿作用、鎮痛作用があるが、(心)毒性があるため慎重な投与が必要である。
2 適切
ブシの強心作用や中枢神経系の興奮、血液循環の改善などの作用から類推できる。
3 適切
含有されているボタンピは、流早産の原因となることがあるため、妊婦には使用しないことが望ましい。
4 適切
ブシなどにより食欲不振、胃部不快感などの消化器症状が副作用として現れることがある。
5 不適切
利尿作用などによる降圧作用を有することから、高血圧の患者にも用いられることがある。
問213 解答 3
附子は毒性が強いため、附子をそのまま生薬として用いることはほとんどなく、修治と呼ばれる弱毒処理が行われる。加工附子や修治附子は、オートクレーブ法を使って高圧蒸気処理をしたものである。アコニチンのエステル部位が加水分解され、毒性は千分の一程度に減毒される。脂溶性が低下することにより、経皮吸収・経粘膜吸収が抑制されるためだと考えられる。
修治に使われているのは水(蒸気)のみであり、酸化剤、還元剤、アルキル化剤、脱水剤を加えていないことから、正解は3であると判断できる。
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