薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 218,219
62歳女性。身長148 cm、体重68 kg。糖尿病のため、食事療法及び運動療法に加え、処方1による治療を受けていたが、効果不十分のため処方2による治療に変更された。
問218(実務)
リラグルチドによる治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 1型糖尿病に適用される薬剤である。
2 単独投与による低血糖のリスクは低いが、スルホニルウレア剤を併用した場合は低血糖を引き起こしやすい。
3 自己会合を起こしたリラグルチドが、投与部位から緩徐に吸収されるため、持続的な効果が期待できる。
4 他の薬物療法で十分な効果が得られない場合に限り使用できる。
問219(物理・化学・生物)
ミチグリニド及びリラグルチドは、インスリンの分泌に影響する薬物である。インスリンに関連する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 インスリンは、別々に生合成されたA鎖とB鎖がジスルフィド結合でつなぎあわされたポリペプチドである。
2 インスリンは、生合成された後、細胞内の顆粒に蓄えられる。
3 血液中のグルコース濃度が上昇すると、インスリン産生細胞内のATP濃度の低下を介して、インスリンの分泌が促進される。
4 リラグルチドは、膵臓のランゲルハンス島に存在するβ細胞に作用する。
5 ミチグリニドは、細胞内のCa2+濃度の低下を介してインスリンの分泌を促進する。
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問218 解答 2、3
1 誤
リラグルチドは、間接的にインスリン分泌を促進する薬剤であり、2型糖尿病の診断が確定した患者にのみ適用を考慮する。1型糖尿病患者には禁忌である。
2 正
本剤は、血糖依存的にインスリン分泌を促進して血糖を低下させるため、単独投与では低血糖を起こしにくい。しかし、インスリン製剤やスルホニルウレア剤と併用した場合は低血糖を引き起こしやすいため、併用する場合はインスリン製剤やスルホニルウレア剤の減量を検討する。
3 正
リラグルチドは、消化管ホルモンであるインクレチンの一つであるGLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)の26位リジンにパルミチン酸を付加して血中アルブミンとの親和性を高めるとともに、自己会合で7量体を形成しやすくしたGLP−1受容体作動薬である。皮下注射で使用することで投与部位から徐々に吸収されるため、1日1回の投与で作用が持続する。
4 誤
本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮する。
問219 解答 2、4
1 誤
インスリンは、アミノ酸21残基のA鎖とアミノ酸30残基のB鎖が2列に並び、2本のジスルフィド結合でつなぎあわされた構造をもつが、元々は1本のペプチド鎖が一部切断されることで生成する。A鎖とB鎖が別々に合成されるわけではない。
2 正
インスリンは合成されたあと、膵β細胞内の顆粒に貯蔵され、刺激に応じて遊離される。
3 誤
血液中のグルコース濃度が上昇すると、グルコースがインスリン産生細胞である膵β細胞にグルコーストランスポーター(GLUT2)を介して取り込まれ、細胞内ATP濃度が上昇することでインスリン分泌が促進される。
4 正
リラグルチドは、膵β細胞に存在するGLP−1受容体を刺激することで、血糖依存的にインスリン分泌を促進する。
5 誤
ミチグリニドは、膵β細胞に存在するSU受容体に結合することで、ATP感受性K+チャネルを遮断する。それに伴い電位依存性Ca2+チャネルを開口させ、細胞内のCa2+濃度を上昇させることで、インスリン分泌を促進する。
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