薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 230,231
一部の遺伝子疾患は新生児マススクリーニングにより診断され、早期に適切な治療を行うことができる。一方、成長後に発症することで明らかになる遺伝子疾患もある。
問230(衛生)
新生児マススクリーニングに関する記述について、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 先天性代謝異常等検査ともいう。
2 対象疾患には、血友病が含まれる。
3 検体には、生後約1週目に採取した尿が用いられる。
4 検査には、公費負担制度がある。
5 対象は、発見頻度が非常に低い(数百万人に1人程度の)疾患である。
問231(実務)
14歳女児。かつて新生児マススクリーニングで異常は見つからなかった。しかし、肝機能の異常が認められたため精査した結果、遺伝性疾患であるウイルソン病と診断され、以下の薬剤が処方された。
この処方の調剤に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ペニシラミンと酢酸亜鉛水和物を同時に内服すると、作用が減弱するので疑義照会する。
2 ピリドキサールリン酸エステル水和物は、酢酸亜鉛水和物の副作用を防止する目的で使用することを患者に説明する。
3 酢酸亜鉛水和物は、ウイルソン病の病態として生じる吸収低下による亜鉛欠乏の改善を目的として使用することを患者に説明する。
4 貧血の症状が現れた場合、受診するよう患者に説明する。
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問230 解答 1、4
1 正
新生児マススクリーニングは、先天性代謝異常等検査とも呼ばれ、生後5〜7日の新生児を対象に4種の先天性代謝異常(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症)と2種の内分泌疾患(先天性副腎過形成症、クレチン症)の6疾患について公費により集団検診を行う。
※現在では、タンデムマス法という先天性代謝異常の新しい検査法が導入されている。タンデムマス法では、従来の6疾患のうちのアミノ酸代謝異常3疾患(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症)に加えて、有機酸代謝異常及び脂肪酸代謝異常の13疾患(計16疾患)の早期発見が可能である。
2 誤
解説1参照。新生児マススクリーニングの対象疾患には、血友病は含まれていない。
3 誤
検体には、生後5〜7日に、かかとより採取した血液が用いられる。
4 正
解説1参照。
5 誤
対象疾患により発見頻度は異なるが、最も発見頻度の高い疾患はクレチン症(約4000人に1人)である。
問231 解答1、4
1 正
ペニシラミンは、重金属とキレートを形成して解毒作用を示す。銅のほか、亜鉛などの重金属ともキレートを形成するため、酢酸亜鉛水和物を同時に内服した場合は作用が減弱するため疑義照会する必要がある。
2 誤
ペニシラミンは、ビタミンB6の吸収を阻害するため、ペニシラミン服用時はビタミンB6が欠乏しやすい。よって欠乏の予防として、ビタミンB6製剤であるピリドキサールリン酸エステル水和物を投与している。
3 誤
ウィルソン病は銅の代謝障害であり、生体内への過剰の銅の蓄積により脳、肝臓、腎臓、眼などに障害が現れる。酢酸亜鉛水和物は、腸管粘膜上皮細胞におけるメタロチオネインの誘導を目的として投与され、メタロチオネインと結合した銅は、吸収されずに糞便中に排泄される。
4 正
銅はヘム合成に関与するため、ペニシラミンにより過剰に銅が排泄されると、副作用として、貧血が起こることがある。よって、貧血の症状が現れた場合、受診するよう患者に説明する必要がある。
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