薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 250,251
69歳女性。近医より紹介され、不整脈の精密検査目的で入院することになり、以下の処方薬を持参した。血清クレアチニン値は1.4 mg/dLであり、AST及びALTはそれぞれ30、35 IU/Lであった。
問250(実務)
持参薬を確認した薬剤師が担当医に提案すべき内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 トリアゾラム錠には重大な薬剤性不整脈が知られているため中止する。
2 肝機能が低下しているので、カルベジロール錠をプロプラノロール塩酸塩錠に変更する。
3 肝機能が低下しているので、ラベプラゾールナトリウムを減量する。
4 腎機能が低下しているので、ワルファリンカリウムを減量する。
5 腎機能が低下しているので、シベンゾリンコハク酸塩を減量する。
問251(薬理)
処方された個々の薬剤の薬理作用として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 カルベジロールは、アドレナリンβ受容体遮断作用に加え、アドレナリンα1受容体遮断作用も有する。
2 カルベジロールは、プロプラノロールと異なり、内因性交感神経刺激作用(ISA)を有する。
3 シベンゾリンは、心筋のNa+チャネル遮断作用とK+チャネル開口作用を有し、活動電位の持続時間を短縮する。
4 ベプリジルは、電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断し、房室結節の有効不応期を延長する。
5 ワルファリンは、アンチトロンビンⅢの作用を増強し、抗凝固作用を示す。
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問250 解答 5
1 誤
トリアゾラム錠の重大な副作用として、薬剤性不整脈という報告は特にない。なお、トリアゾラム錠の重大な副作用には、薬物依存や呼吸抑制、一過性前向性健忘などがある。
2 誤
肝機能の指標であるAST及びALTはともに基準値の範囲内であるため、問題文のデータからは肝機能が低下しているとはいえない。また、カルベジロール錠、プロプラノロール塩酸塩錠ともに肝代謝型薬物であり、提案する内容として適切ではない。
3 誤
解説2参照
4 誤
腎機能の指標である血清クレアチニン値は正常値の1.0 mg/dLを超えているため、この患者の腎機能は低下していると考えられるが、ワルファリンカリウムは肝代謝型薬物であり、肝機能は正常と考えられるため、減量する必要はない。
5 正
シベンゾリンコハク酸塩は、腎排泄型薬物である。この患者の腎機能は低下していると考えられるため、シベンゾリンコハク酸塩の減量を担当医に提案するべきである。
問251 解答 1、4
1 正
カルベジロールは、アドレナリンα、β受容体遮断薬である。
2 誤
カルベジロールは、プロプラノロール同様、内因性交感神経刺激作用(ISA)をもたない。
3 誤
シベンゾリンは、Vaughan Williams分類におけるⅠa群抗不整脈薬であり、Na+チャネル及びK+チャネル遮断作用を有し、活動電位持続時間を延長する。
4 正
ベプリジルは、Vaughan Williams分類におけるⅣ群抗不整脈薬であり、電位依存性L型Ca2+チャネル遮断作用を有し、房室結節の有効不応期を延長する。
5 誤
ワルファリンは、肝臓においてビタミンKと拮抗し、プロトロンビンなどの血液凝固因子の生合成を抑制することで、抗凝固作用を示す。なお、アンチトロンビンⅢの作用を増強する抗凝固薬には、ヘパリンなどが挙げられる。
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