薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 264,265
55歳男性。体重60kg。クレアチニンクリアランス40 mL/min。ヘルペス脳炎のため、以下の処方が出された。
問264(薬理)
アシクロビルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 抗ウイルス作用発現には、感染細胞内でのウイルス由来のチミジンキナーゼによるリン酸化が必要である。
2 生体内でバラシクロビルに変換され、抗ウイルス活性を示す。
3 単純ヘルペスウイルス(HSV)1型の増殖を抑制するが、HSV2型の増殖は抑制しない。
4 活性化体に変換されてdGTPと競合し、ウイルスのDNA合成を阻害する。
問265(実務)
医療スタッフに対する薬剤の情報提供として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 アナフィラキシーショックが現れる場合がある。
2 減量や投与間隔の延長を考慮する必要はない。
3 意識障害(昏睡)、せん妄などの精神神経症状が現れる場合がある。
4 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群が現れる場合がある。
5 HSVの増殖を抑制するため、速やかに投与を開始することが重要である。
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問264 解答 1、4
1 正
アシクロビルは、感染細胞内でウイルス由来のチミジンキナーゼによりリン酸化され活性体のアシクロビル三リン酸となり、dGTPと競合しDNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスのDNA合成を抑制する。
2 誤
バラシクロビルは、アシクロビルのプロドラッグであり、アシクロビルに変換され抗ウイルス作用を示す。アシクロビルが生体内でバラシクロビルに変換されるわけではない。
3 誤
アシクロビルは、単純ヘルペスウイルス(HSV)1型だけでなく、HSV2型の増殖も抑制する。
4 正
解説1参照
問265 解答 2
1 適切
アシクロビルの重大な副作用としては、アナフィラキシーショック、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性腎不全、意識障害(昏睡)、せん妄等の精神神経症状などが現れる可能性があるため注意が必要である。
2 不適切
アシクロビルは、腎排泄型薬物であり、本患者はクレアチニンクリアランス40 mL/min(基準値:120〜130 mL/min)と腎機能の低下が認められるため、投与量の減量や投与間隔の延長を考慮する必要がある。
3 適切
解説1参照
4 適切
解説1参照
5 適切
アシクロビルの投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるため、早期に投与することが望ましい。特にヘルペス脳炎は処置が遅れると重篤な状態に陥る可能性もあるため、疑いがあれば速やかにアシクロビルの投与を開始するべきである。
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