薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 280,281
35歳男性。てんかんの持病があり、処方1によりコントロールされていた。
あるとき、2日間激しい下痢が続き、救急外来を受診した。患者からの聴取により黄色ブドウ球菌による食中毒が疑われた。医師が処方2を追加する際に、薬剤師に意見を求めてきた。
問280(実務)
医師に対する情報提供として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ロペラミド塩酸塩カプセル1 mgを追加すべきである。
2 バルプロ酸の血中濃度の低下を懸念して、TDMを実施すべきである。
3 バルプロ酸の副作用リスクが高まるため、肝機能検査を実施すべきである。
4 ビフィズス菌錠は、耐性乳酸菌錠に変更すべきである。
5 アンピシリンは、バルプロ酸との相互作用により中枢性けいれんを誘発するので、併用禁忌である。
問281(薬剤)
デパケンR錠は、マトリックス型の徐放錠である。マトリックス型徐放錠の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 服用後速やかに崩壊し、内包された徐放性顆粒から薬物が放出される。
2 速放性顆粒と徐放性顆粒を混合し、打錠した製剤である。
3 徐放層と速放層の2層からなる錠剤である。
4 速放性の外殻層と徐放性の内殻錠からなる錠剤である。
5 基剤中に薬物が均一に分散している。
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問280 解答 2、4
1 不適切
今回は黄色ブドウ球菌による食中毒が疑われている。止瀉薬であるロペラミドを用いることで黄色ブドウ球菌の排泄が抑制されてしまうので、ロペラミドを用いることはない。
2 適切
デパケンR錠は徐放錠である。徐放性の製剤は徐々に薬物が放出され効果を発揮する。そのため一定時間消化管内に薬剤が留まる必要があるが、今回黄色ブドウ球菌による食中毒のため、下痢や嘔吐により薬剤の排出が速くなってしまっている。十分に血中薬物濃度が上昇しない可能性が考えられるので、この患者に対してTDMを実施するべきであると考えられる。
3 不適切
バルプロ酸の副作用に重篤な肝障害があるため、投与初期6ヶ月間は定期的に肝機能検査を実施する必要がある。しかし、今回は黄色ブドウ球菌感染による下痢でバルプロ酸の血中濃度が十分に上昇しない可能性がある上、アンピシリンなどと併用することによりバルプロ酸による肝機能障害が起こりやすくなるという報告もないため、追加処方のタイミングで肝機能検査を実施する必要性は低い。
4 適切
今回は抗菌薬としてアンピシリン水和物カプセルを用いている。ビフィズス菌はアンピシリンに対して感受性が高い。そのため、抗生物質に対して抵抗性を持たせた耐性乳酸菌錠に変更するべきであると考えられる。
5 不適切
アンピシリンとバルプロ酸の併用による相互作用は報告されていない。なお、バルプロ酸との併用によりけいれんを誘発するため併用禁忌となっている薬剤は、カルバペネム系である。
問281 解答 5
経口徐放性製剤には、錠剤全体が徐放性をもつよう設計されたシングルユニットタイプと錠剤に含まれる顆粒1つ1つが徐放性をもつよう設計されたマルチプルユニットタイプがある。シングルユニットタイプには、マトリックス型、ロンタブ型、スパンタブ型などがあり、マルチプルユニットタイプには、スパスタブ型などがある。
1 誤
マルチプルユニットタイプに関する記述である。
2 誤
マルチプルユニットタイプのうち、スパスタブ型に関する記述である。
3 誤
シングルユニットタイプのうち、スパンタブ型に関する記述である。
4 誤
シングルユニットタイプのうち、ロンタブ型に関する記述である。
5 正
シングルユニットタイプのうち、マトリックス型に関する記述である。
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