薬剤師国家試験 平成25年度 第98回 - 一般 実践問題 - 問 288,289
68歳女性。体重51 kg。副腎皮質ステロイド薬の吸入エアゾール剤で気管支ぜん息の治療を受けていた。しかし、噴霧と吸気のタイミングを合わせることができず、以下の処方に変更された。
問288(実務)
この薬剤とピークフローメーターに関する指導内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 まず息を吐いてから、薬物を深く吸い上げるように指導した。
2 この薬剤のマウスピースが汚れた場合には、水洗いするように指導した。
3 この薬剤の有効成分は、肺内に到達後、活性体になることを説明した。
4 ピークフローメーターは、最大吸気流量を簡便に測定するものであることを説明した。
5 ピークフロー値は、気道閉塞の状態の客観的な指標なので、毎日測定するように指導した。
問289(病態・薬物治療)
この症例と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 口腔内カンジダ症の発症に対して注意が重要である。
2 ステロイド薬の投与量から、重症ぜん息症状が持続していると考えられる。
3 ステロイド薬の投与経路を、吸入から内服に変更することにより減量できる。
4 ぜん息発作時には、ロイコトリエン受容体拮抗薬が著効する。
5 インフルエンザの予防のためのワクチン接種は推奨されない。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問288 解答 1、5
1 正
大きく息を吐いた後に、マウスピースをくわえ深く吸い上げる。吸入する薬が微量のため、刺激が少なく吸った感じがしないが、正しい操作を実行できていれば薬を吸入できていることを伝えておく。
2 誤
水洗いによりドライパウダー状の薬物が湿ってしまい正しく吸入できなくなるおそれがあるため、マウスピースが汚れた場合は乾燥した布などで拭き、水洗いはしないように指導する。
3 誤
ブデソニドは、アンテドラッグステロイド製剤であり、局所抗炎症作用が強く、肺内から吸収されると速やかに不活性化されるため、全身性の副作用が起こりにくい。
4 誤
ピークフローメーターは、最大呼気流量(ピークフロー値)を測定するものである。
5 正
ピークフロー値は、気管支の閉塞に伴い低下するため、気道閉塞状態を反映する指標として用いられる。毎日朝と夜の決まった時間に測定し記録することで、季節間変動、日内変動など喘息発作の状態を把握できる。
問289 解答 1
1 正
副腎皮質ステロイド薬には免疫抑制作用があるため、吸入後薬剤が口腔内に残存していると、口腔内カンジダ症を発症させるおそれがある。そのため、吸入後は必ずうがいを行うように服薬指導する必要がある。
2 誤
パルミコートの成人における用法用量は、「通常、成人には、ブデソニドとして1回100〜400 µgを1日2回吸入投与する。なお、症状に応じて増減するが、1日の最高量は1600 µgまでとする。」とされている。本処方は通常成人用量であり、重症ぜん息症状が持続しているとは考え難い。
3 誤
ステロイド薬を吸入で用いた場合、直接気管支などの炎症部位に作用させることができるため、内服で用いるよりも少ない投与量で効果を発揮することができる。
4 誤
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、効果発現が遅いため、ぜん息発作の長期管理薬(コントローラー)として内服で用いられる。なお、発作時治療薬(リリーバー)としては、短時間作用型アドレナリンβ2受容体刺激薬の吸入などが著用いられる。
5 誤
気管支ぜん息患者では、気道狭窄によりインフルエンザウイルスなどによる感染症を合併しやすく、また感染症の合併により症状の難治化や重症化を起こすことがある。そのため、インフルエンザの予防のためのワクチン接種が推奨される。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿