薬剤師国家試験 平成27年度 第100回 - 一般 理論問題 - 問 118
1920年代後半、F.Griffithは、マウスを用いた肺炎球菌の感染実験を行った。下記はその概要である。この実験に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 (4)でS型の生菌が多量に検出されたことから、加熱処理が不完全であったためにS型菌が一部生存していたものと考えられる。
2 (4)でマウスが発症したのは、S型の加熱死菌由来の物質がR型菌に取り込まれた結果、R型菌の性質が変化したためと考えられる。
3 (4)でマウスが発症したのは、S型菌が芽胞を形成したことにより、加熱処理に対して抵抗性を獲得したためと考えられる。
4 この実験結果から、接合と呼ばれる現象が細菌間の遺伝子伝達に重要であることが示される。
5 この実験結果から、形質の変化をもたらす物質が耐熱性であることが考えられる。
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解答 2、5
F.Griffithが行った、マウスを用いた肺炎球菌の感染実験に対する考察を以下に示す。
(1)莢膜(きょうまく)をもつS型菌(強毒株)の一定数をマウスに投与したところ、マウスは肺炎を発症し死亡した。
考察
莢膜を有するS型菌は、マウスに肺炎を発症させると考えられる。
(2)莢膜をもたないR型菌(弱毒株)を(1)と同じ条件でマウスに投与しても、マウスは肺炎を発症しなかった。
考察
莢膜を有しないR型菌は、マウスに肺炎を発症させないと考えられる。
(3)S型菌を加熱殺菌した後に、(1)と同じ条件でマウスに投与しても、マウスは肺炎を発症しなかった。
考察
S型菌の加熱滅菌したものは肺炎を発症させないと考えられる。
(4)(2)で用いたR型の生菌及び(3)で用いたS型の加熱死菌を混合し、マウスに投与したところ、マウスは肺炎を発症し死亡した。また、マウスの死体からS型の生菌が多量に検出された。
考察
S型菌の加熱死菌から遊離した莢膜合成に関わるDNAをR型の生菌が取り込み、莢膜をもたないR型菌の形質転換(トランスフォーメーション)を起こし、莢膜を有するS型菌に変化し、マウスに肺炎を発症させたと考えられる。
1 誤
(3)の実験結果より、加熱死菌は一部生存していたとは考えにくい。
2 正
(4)の実験結果の考察を参照
3 誤
肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)は、グラム陽性無芽胞球菌であり、加熱により芽胞を形成することはない。
4 誤
接合とは、生きた細菌どうしの一部が融合し、細菌のDNAの一部が伝達される現象のことである。(4)の実験では、加熱死菌を用いているため、接合を起こすとは考えにくい。
5 正
(4)で形質変化させた物質は、加熱死菌のS型菌由来であり、加熱により失活しなかったことから、耐熱性であると考えられる。
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