薬剤師国家試験 平成27年度 第100回 - 一般 実践問題 - 問 226,227
68歳女性。胃全摘出術の既往がある。半年前に意識障害を起こし入院中。21週前から経腸栄養療法を開始し、3日前の検査の結果、白血球数減少と貧血を認めた。出血の傾向はなく、骨髄穿刺の結果からは骨髄抑制は認められなかった。
問226(実務)
この患者の栄養管理に対する薬剤師の対応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 タンパク質・エネルギー低栄養状態に関連した貧血の可能性について医師に伝えた。
2 n-3系脂肪酸を多く含む経腸栄養剤への変更を医師に提案した。
3 血中の銅濃度を測定するよう医師に提案した。
4 鉄剤の追加処方を医師に提案した。
5 過去6ヶ月間の体重変動を確認した。
問227(衛生)
栄養素及び栄養状態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 タンパク質・エネルギー低栄養状態が長期に続くと、体内の窒素平衡は正となる。
2 n-3系脂肪酸は小腸からの吸収の際、胆汁酸とミセルを形成しない。
3 銅の小腸からの吸収は、過剰の亜鉛の摂取により阻害される。
4 非ヘム鉄の小腸からの吸収は、ビタミンCにより促進される。
5 Body mass index(BMI)が22の場合、「やせ」と判定される。
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問226 解答 3
本患者にみられた貧血の原因を以下のように考えることができる。
総タンパク質:7.8 g/dL(基準値:約6.5〜8.0 g/dL)、アルブミン:4.2 g/dL(基準値:約4.0〜5.0 g/dL)であることから、総タンパク質、アルブミンともに基準値範囲内であり、低栄養状態による貧血の可能性は低いと考えられる。また、トランスフェリン:275 mg/dL(基準値:200〜340 mg/dL)であることから、トランスフェリンは基準値内であり、鉄欠乏による貧血の可能性は低いと考えられる。
本患者は、胃全摘出術の既往歴があり、21週前から経腸栄養療法を開始していることから、必須微量元素(Cu、Znなど)が欠乏しやすい状態にある。
これらのことから、本患者にみられた貧血は、銅欠乏によるものと考えられる。
1 誤
前記参照
2 誤
銅欠乏による貧血に対して、n−3系脂肪酸を多く含む経腸栄養剤を投与しても症状の改善を期待することはできない。なお、n−3系脂肪酸を多く含む経腸栄養剤は、抗炎症作用を有しているため、呼吸不全患者に有効である。
3 正
前記参照
4 誤
前記参照
5 誤
本患者に対して、体重変動を確認することは重要ではない。
問227 解答 3、4
1 誤
窒素平衡とは、摂取した食事中の窒素量と排泄された窒素量が等しい状態のことである。タンパク質・エネルギー低栄養状態が長期に続くと、摂取した食事中の窒素が排泄された窒素量より少なくなるため、体内の窒素平衡は負となる。
2 誤
エイコサペンタエン酸(C20:5)やドコサヘキサエン酸(C22:6)などのn-3系脂肪酸は、長鎖脂肪酸であり、胆汁酸とミセルを形成し、小腸から吸収される。なお、中鎖及び短鎖脂肪酸(炭素数10以下)は、胆汁酸とミセル形成せずに、そのまま小腸から吸収される。
3 正
過剰の亜鉛を摂取すると、銅を輸送する担体が競合的に阻害されるため、銅の小腸からの吸収は阻害される。
4 正
非ヘム鉄はFe2+となり、小腸から吸収される。ビタミンCにより非ヘム鉄に含まれるFe3+は、還元されFe2+となるため、非ヘム鉄の小腸からの吸収は、ビタミンCにより促進される。
5 誤
Body mass index(BMI)が22の場合、「標準」と判定される。なお、BMIが18.5以下を「やせ」、25以上を「肥満」としている。
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