薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 理論問題 - 問 130
母子感染に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 妊娠初期にサイトメガロウイルスに初感染すると、母子感染を起こすことがある。
2 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の母子感染を防ぐため、ワクチンの接種が推奨されている。
3 B型肝炎ウイルスは、母体にワクチンを接種することにより、胎児への感染を防ぐことができる。
4 風疹は高率で胎内感染を起こすため、その予防を目的に、妊娠前の抗体検査が推奨されている。
5 トキソプラズマ感染による先天異常は、ワクチンにより防ぐことができる。
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解答 1、4
母子感染は、垂直感染ともよばれ、主に母親から子へ感染症が伝染することであり、経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染の3経路がある。
1 正
妊婦が妊娠初期にサイトメガロウイルスに初感染すると、胎盤を通じて胎児に感染し、新生児に難聴、発達障害、視力障害などが現れることがある(先天性サイトメガロウイルス感染症)。
2 誤
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して有効なワクチンはまだ開発されていない。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染するため、妊婦への抗HIV薬の投与、帝王切開、人工授乳(母乳を与えない)などを行うことによって母子感染を防止する。
3 誤
B型肝炎キャリアの母親(HBs抗原)から生まれる新生児は、ほぼB型肝炎に感染し、そのうち80〜90%がキャリア化する。新生児がキャリア化しないように、新生児に対してHBワクチン(B型肝炎ワクチン)と抗HBヒト免疫グロブリン(HBIG)の投与が行われる(B型肝炎母子感染防止事業)。
4 正
妊婦が妊娠初期に風疹ウイルスに初感染すると、高率で胎内感染(経胎盤感染)を起こし、新生児に難聴、心疾患、白内障などの症状が現れることがある(先天性風疹症候群)。先天性風疹症候群を予防するため、妊娠を希望する女性は、妊娠前に風疹に対する免疫があるかどうか抗体検査を受け、抗体価が低い場合には風疹ワクチンを受けることが推奨されている。
5 誤
トキソプラズマ感染に対して有効なワクチンはまだ開発されていない。妊婦がトキソプラズマに感染した場合、胎盤を通して胎児に感染し、新生児に水頭症、視力障害、精神運動機能障害などが現れるおそれがある(先天性トキソプラズマ症)。トキソプラズマ感染症の病原体はトキソプラズマ原中であり、ネコの糞便中などに存在する。よって、先天性トキソプラズマ症の予防策として、妊婦はネコなどの糞便との接触を避けることが望ましい。
以下、母子感染する主要な疾患を示す。
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