薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 262,263
59歳男性。2日前より上気道感染症状(軽度の咳)を訴えていたが、今朝、突然の悪寒、震えと発熱39℃を認め受診した。肺炎球菌が検出されたので抗菌薬が処方されることとなった。
問262(実務)
この患者に対して投与量を調節する必要性が低いのはどれか。1つ選べ。
1 注射用イミペネム・シラスタチンナトリウム
2 アジスロマイシン水和物錠
3 セフィキシム水和物カプセル
4 アンピシリン水和物カプセル
5 レボフロキサシン水和物錠
問263(薬理)
前問中の薬物の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 イミペネムは、UDP-N-アセチルムラミン酸の合成を阻害する。
2 アジスロマイシンは、細菌のリボソーム50 Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害する。
3 セフィキシムは、細菌のリボソーム30 Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害する。
4 アンピシリンは、ペプチドグリカン前駆体のペプチジル-D-アラニンに結合し、細胞壁合成を阻害する。
5 レボフロキサシンは、細菌のDNAジャイレースを阻害し、DNAの複製を阻害する。
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問262 解答 2
本患者は、血清クレアチニン値5.5 mg/dL(基準値:0.5〜1.3 mg/dL)、クレアチニンクリアランス21 mL/min(基準値:100〜130 mL/min)であることから、高度の腎機能低下が認められる。そのため、本患者に対して腎消失型薬物を投与する際は、投与量を調節する必要がある。選択肢の薬物の中では、アジスロマイシンは、胆汁、消化管分泌を介して、未変化体としてほとんど糞中に排泄されるため、腎障害患者においても投与量を調節する必要性は低い。
なお、イミペネム・シラスタチンナトリウム、セフィキシム、アンピシリン、レボフロキサシンは、腎消失型薬物であり、腎機能障害がある患者へ投与する場合には投与量を調節する必要がある。
問263 解答 2、5
1 誤
イミペネムは、β−ラクタム系抗菌薬であり、ペニシリン結合タンパク(PBP)に結合することで細胞壁合成を阻害する。なお、UDPサイクルを阻害し、UDP-N-アセチルムラミン酸の合成を阻害する薬物は、ホスホマイシンである。
2 正
アジスロマイシンは、マクロライド系抗菌薬であり、細菌リボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害する。
3 誤
セフィキシムは、β−ラクタム系抗菌薬であり、ペニシリン結合タンパク(PBP)に結合することで細胞壁合成を阻害する。なお、細菌のリボソーム30 Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害する薬物には、テトラサイクリンなどがある。
4 誤
アンピシリンは、β−ラクタム系抗菌薬であり、ペニシリン結合タンパク(PBP)に結合することで細胞壁合成を阻害する。なお、ペプチドグリカン前駆体のペプチジル-D-アラニンに結合し、細胞壁合成を阻害する薬物は、バンコマイシン、テイコプラニンである。
5 正
レボフロキサシンは、ニューキノロン系抗菌薬であり、細菌のDNAジャイレースを阻害し、DNAの複製を阻害する。
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