薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 290,291
60歳女性。下部消化管内視鏡検査によりS状結腸がんが指摘された。さらにCTによる精査の結果、肺と肝臓に転移が見られた。手術適応がなく、外来にて、オキサリプラチン、レボホリナートカルシウム、フルオロウラシルを用いたがん化学療法を行うこととなった。
問290(実務)
本化学療法における副作用への対応に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 痛風腎の予防のために尿のアルカリ化及びアロプリノールの投与が必要である。
2 重篤な過敏症状の発現時には、ステロイド及び抗ヒスタミン薬の静注を行う。
3 白血球数低下を伴う発熱時には感染症を疑い、直ちに十分量の抗生物質を投与する。
4 投与2〜3日後に筋肉痛及び関節痛が発現した場合には、鎮痛薬を投与する。
5 出血性膀胱炎のリスクを軽減するために必要量の輸液を投与する。
問291(病態・薬物治療)
大腸がんに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 発がん過程において高頻度で見つかる変異は、EGFR、p53、KRASの3遺伝子である。
2 早期の場合はほとんどが無症状だが、脳転移による頭痛で発見される例が多い。
3 腫瘍の大きさや発生部位によって腹痛、血便、腸閉塞などの症状を呈する。
4 扁平上皮がんが大半を占める。
5 血清CEAとCA19-9は、再発の診断に有用な腫瘍マーカーである。
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問290 解答 2、3
本化学療法は、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチンの併用によるFOLFOX療法であり、手術不能な結腸・直腸がんに適用される。
1 誤
白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍におけるがん化学療法では、副作用として大量のがん細胞が急速に崩壊し、がん細胞内物質が血液中に増加する腫瘍崩壊症候群が起こることがある。腫瘍崩壊症候群では、血中の尿酸値が増加し、その尿酸が腎臓で結晶化・沈着することで痛風腎に至ることがある。そのため、腫瘍崩壊症候群が予測される場合には、尿酸生成阻害薬のアロプリノールや尿酸分解酵素製剤のラスブリカーゼなどを投与し痛風腎を予防する必要がある。
しかし、S状結腸がんのような固形がんでは、腫瘍崩壊症候群の発生頻度は低いため、本化学療法においてそのような対策は必要ない。
2 正
オキサリプラチンなどの白金製剤は、副作用としてアナフィラキシーショックを起こすことがある。本化学療法中に重篤な過敏症状が発現した場合は本剤の投与中止、副腎皮質ステロイド性薬や抗ヒスタミン薬の静脈内注射、アドレナリンの筋肉内注射などの対処を行う。
3 正
フルオロウラシルやオキサリプラチンなどの抗悪性腫瘍薬は、副作用として好中球減少症を起こすことがあり、易感染状態による感染症の合併に注意が必要である。そのため、本化学療法中に発熱した場合は感染症を疑い、直ちに十分量の抗生物質を投与するなどの対処を行う。
4 誤
投与2〜3日後に筋肉痛及び関節痛が発現しやすい抗悪性腫瘍薬としては、パクリタキセルが挙げられ、FOLFOX療法においてはそのような報告はない。なお、筋肉痛及び関節痛が発現した際には、鎮痛薬の投与やマッサージなどの対処を行う。
5 誤
出血性膀胱炎が発現しやすい抗悪性腫瘍薬としては、シクロホスファミドやイホスファミドがあげられ、FOLFOX療法においてはそのような報告はない。なお、出血性膀胱炎のリスクを軽減するためには、輸液による利尿や、原因物質であるアクロレインを無毒化するメスナの投与が行われる。
問291 解答 3、5
1 誤
大腸がんの発がん過程において、正常粘膜から腺腫を経て発がんに至る経路を腺腫-がん連関(adenoma-carcinoma sequence)といい、本過程にはがん抑制遺伝子であるAPC遺伝子やp53遺伝子、がん遺伝子であるKRAS遺伝子などの遺伝子変異が関与しており、EGFRの変異はその発がん過程には特に関係ないとされている。
2 誤
大腸がんは、早期の場合はほとんどが無症状であるため発見が難しく、進行し血便や便秘などの症状があらわれてから発見されることが多い。また、大腸がんは、血行性による肝臓や肺への転移が多く、脳への転移はまれである。
3 正
大腸がんは、腫瘍の大きさや発生部位によって症状が異なる。右側大腸のがんは比較的症状が少なく、腫瘍が大きくなったり、少しずつ出血が続いて貧血の症状があらわれたところで気づくことが多い。また、左側大腸のがんは比較的早い時期から症状が出やすく、血便や腸閉塞症状などが生じやすい。
4 誤
大腸がんは、腺がんが大半を占める。なお、扁平上皮がんが大半を占めるのは、食道がんや子宮頸がんなどである。
5 正
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