薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 296,297
82歳女性。関節リウマチと診断され、現在は以下の処方が出されている。
問296(実務)
メトトレキサートカプセルの服薬指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 めまい、ふらつきなどの低血糖症状が起こる場合があります。
2 毎日服用する薬ではないので注意してください。
3 発熱、のどの痛み、風邪のような症状があらわれた場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
4 尿の色がオレンジ色になることがあります。
5 痛みがおさまったら服薬をやめてください。
問297(病態・薬物治療)
この患者において関節リウマチの症状が悪化したため、生物学的製剤の追加を考慮することとなった。メトトレキサートとの併用が前提で投与されるのはどれか。1つ選べ。
1 テムシロリムス
2 リツキシマブ
3 トシリズマブ
4 アバタセプト
5 インフリキシマブ
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問296 解答 2、3
1 不適切
メトトレキサートの副作用として低血糖が現れるとの報告はない。なお、低血糖症状に注意が必要な薬剤としては、SU剤などの経口血糖降下薬があげられる。
2 適切
メトトレキサートは、通常1週間単位の投与量を計6 mgとし、これを1回又は2〜3回に分割して経口投与する。また、分割して投与する場合は、初日から2日目にかけて12時間間隔で行い、1回または2回の分割投与の場合には残りの6日間、3回の分割投与の場合には残りの5日間は休薬する。本患者の場合、1回2 mgを1週間に3回、月曜日と火曜日に服用し、その後5日間休薬するように処方されており、毎日服用するわけではない。
3 適切
メトトレキサートは、副作用として骨髄抑制による無顆粒球症を起こすことがあるため、無顆粒球症の初期症状である発熱、のどの痛み、風邪のような症状があらわれた場合は、すぐに医師の診察を受けるよう指導する。
4 不適切
メトトレキサートの服用により、尿が着色するとの報告はない。なお、尿の着色が起こる薬剤としては、リファンピシンやサラゾスルファピリジン、リボフラビンなどがあげられる。
5 不適切
関節リウマチは慢性の炎症性疾患であり、寛解と増悪を繰り返しながら進行するため、一時的に痛みがおさまっても、再び炎症が進行して痛みが生じることがある。そのため、痛みがおさまっても継続して服薬するよう指導する。
問297 解答 5
1 誤
テムシロリムスは、mTOR阻害薬であり、がん細胞の細胞周期の移行及び血管新生に必要なmTOR活性を抑制することで、根治切除不能又は転移性の腎細胞がんの治療に用いられる。
2 誤
リツキシマブは、抗CD20モノクローナル抗体製剤であり、Bリンパ球表面に存在するCD20抗原に特異的に結合し抗腫瘍効果を示すことで、CD20陽性のB細胞陽性非ホジキンリンパ腫の治療に用いられる。
3 誤
トシリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体製剤であり、膜結合性及び可溶性IL-6受容体とIL-6の結合を阻害することで、関節リウマチの治療に用いられるが、メトトレキサートとの併用は必須ではない。
4 誤
アバタセプトは抗原提示細胞表面CD80/CD86に結合し、T細胞のCD28を介した共刺激シグナルを阻害することで、関節リウマチの治療に用いられるが、メトトレキサートとの併用は必須ではない。
5 正
インフリキシマブは、キメラ型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤であり、TNF-αと結合しその活性を中和することで、関節リウマチの治療に用いられる。本剤は、構造中にマウスタンパク由来の部分構造を有するため、体内で異種タンパクと認識され、本剤に対する抗体産生による作用減弱がみられることがある。そのため、本剤投与時には、抗体産生を抑制するためにメトトレキサートを必ず併用する。
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