薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 300,301
71歳男性。50年前から喫煙習慣がある(喫煙指数:1200)。階段歩行時に息切れを訴え近医を受診し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断され、以下の処方が出された。
問300(実務)
処方1の薬剤を使用するにあたり、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 前立腺肥大症があるかを確認する。
2 口腔内カンジダ症予防のため、チオトロピウムの吸入後はよくうがいをするよう患者に伝える。
3 フドステインの併用により、チオトロピウムの作用が増強するおそれがあることを患者に伝える。
4 喫煙者はチオトロピウムの作用が増強するおそれがあることを患者に伝える。
5 副作用として、口渇が現れることがあることを患者に伝える。
問301(病態・薬物治療)
上記の患者に関連した記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。
1 フドステインは去痰の目的に用いられている。
2 気管支ぜん息と異なり、禁煙は治療に影響を与えない。
3 病状が増悪するので、インフルエンザワクチン接種は禁忌である。
4 テオフィリンにより、尿閉の副作用が出やすいので注意が必要である。
5 改善が見られなければ、サルメテロールキシナホ酸塩の追加を考慮する。
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問300 解答 1、5
1 正
処方1のチオトロピウム臭化物水和物は抗コリン薬であり、副作用として尿閉を起こすため、前立線肥大症等により排尿障害のある患者への投与は禁忌である。そのため、本剤を投与する際には、前立腺肥大症があるかを確認する必要がある。
2 誤
チオトロピウムの副作用として、口腔内カンジダ症が現れるとの報告はない。なお、口腔内カンジダ症などの副作用に注意が必要な薬剤としては、副腎皮質ステロイド性薬の吸入剤があげられる。副腎皮質ステロイド性薬の吸入剤は、口腔・気管支において免疫抑制作用を示すことにより、口腔内カンジダ症や嗄声などを生じることがある。そのため、副腎皮質ステロイド性薬を含む薬剤を吸入する際は、吸入後によくうがいをするよう指導する必要がある。
3 誤
フドステインには、チオトロピウムの作用を増強するとの報告はない。
4 誤
喫煙することで、CYP1A2が誘導されることがあるが、チオトロピウムの代謝に関わる酵素はCYP2D6及び3A4であるため、喫煙による影響は受けないと考えられる。なお、本処方のうちテオフィリンはCYP1A2により代謝されるため、喫煙によりテオフィリンの血中濃度が低下し、作用が減弱するおそれがあることを患者に伝える必要がある。
5 正
本処方のうち、チオトロピウム臭化物水和物は抗コリン作用により、口渇や便秘、尿閉などの副作用が現れることがある。
問301 解答 1、5
1 正
フドステインは、痰の主成分であるムチンの分泌を行う杯細胞の過形成などの作用を有し、去痰の目的で用いられる。
2 誤
COPDは、喫煙などにより有害な物質を長期に吸入することで肺に炎症を引き起こし、非可逆的な気流閉塞をきたす疾患である。そのため、禁煙はCOPD治療において重要となる。
3 誤
COPDの患者は、慢性的な気道閉塞により、細菌やウイルスによる呼吸器感染症が重篤化しやすいため、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が推奨される。
4 誤
テオフィリン副作用として、尿閉が現れるとの報告はない。なお、本処方のうち、副作用として尿閉を起こすのはチオトロピウム臭化物水和物である。
5 正
サルメテロールキシナホ酸塩は、長時間型アドレナリンβ2受容体刺激薬であり、チオトロピウムのような長時間型抗コリン薬とともに、COPDの長期管理薬として用いられる。
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