薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 308,309
62歳男性。切除不能の再発直腸がんに対して、カペシタビンとオキサリプラチン併用化学療法を開始することになった。外来化学療法室の薬剤師は、男性には循環器内科の受診歴があり、以下の薬剤を服用中であることを確認した。
問308(実務)
薬剤師は以下の検査データを確認した。化学療法の開始に伴う相互作用による重篤な副作用を回避するため、定期的にモニタリングすべき検査データとして、特に重要なのはどれか。1つ選べ。
1 クレアチニンキナーゼ値
2 PT-INR値
3 血清カリウム値
4 血糖値
5 白血球数
問309(法規・制度・倫理)
カペシタビンは添付文書に休薬期間を設けるように記載されているが、休薬期間を設けない処方がなされた。薬剤師が疑義照会をせずに、そのまま調剤したため、患者に健康被害が生じた。薬剤師が問われる可能性のある法的責任として誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 民法に基づく不法行為責任
2 刑法に基づく業務上過失傷害罪
3 薬剤師法に基づく薬剤師業務の停止
4 薬剤師法に基づく戒告
5 医療法に基づく罰金刑
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問308 解答 2
切除不能の再発直腸がんに対して、カペシタビンとオキサリプラチン併用化学療法を行なう際は、骨髄抑制等の重大な副作用を回避するため、投与開始前及び投与期間中は肝機能、腎機能、血小板数等のモニタリングが必要である。また、カペシタビンとの相互作用による重篤な副作用である血液障害等を回避するため、ワルファリンカリウムやテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム等が併用されていないかを確認する必要もある。
患者が服用中のワルファリンカリウムは、カペシタビンとの併用により、血液凝固能に異常をきたし、出血が発現することで死亡に至った例が報告されている。この副作用は、これらの薬剤の併用開始数日後からカペシタビン投与中止後1ヶ月以内の期間に発現している。そのため、両剤を併用する場合には血液凝固能検査により血液凝固能の指標となるプロトロンビン時間の値(PT-INR値)を定期的にモニタリングし、必要に応じて適切な処理を行うこととされている。
問309 解答 5
薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときには、その処方せんを交付した医師に問い合わせて、その疑義を確かめた後でなければ、調剤してはならない。設問から、薬剤師は疑わしい点があるにもかかわらず、疑義照会をせずに、そのまま調剤を行なったため、患者に健康被害が生じている。この場合、薬剤師は民法、刑法、薬剤師法に関する法的責任を問われる可能性がある。
1 正しい
設問の場合、薬剤師が問われる可能性がある法的責任は、民法においては、債務不履行による損害賠償責任(第415条)や、不法行為による損害賠償責任(第709条)がある。
2 正しい
設問の場合、薬剤師が問われる可能性がある法的責任は、刑法においては、業務上過失致死傷罪(第211条)がある。
3 正しい
設問の場合、薬剤師が問われる可能性がある法的責任は、薬剤師法においては、戒告、3年以内の業務停止又は免許の取消しの処分等(第8条)がある。
4 正しい
解説3参照
5 誤っている
医療法は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与することを目的としている。
したがって、医療法はこの目的を達成するために必要な事項を定めた法律であり、この規定に違反した場合等には罰則を規定しているが、薬剤師に対する罰則は規定されておらず、薬剤師の調剤過誤で問われる法的責任の規定はない。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿