薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 理論問題 - 問 94
水溶液中のイオン間相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 強電解質のモル伝導率は、濃度に比例して増加する。
2 難溶解性塩であるAgClの溶解度は、NaNO3の添加によるイオン強度の増大とともに増大する。
3 高濃度の強電解質溶液におけるイオンの平均活量係数は、1より大きくなることがある。
4 水中における電解質のイオン間相互作用は、アルコールなどを添加して溶媒の誘電率が低下すると減少する。
5 アルカリ金属における極限モル伝導率は、K+<Na+<Li+の順に大きくなっている。
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解答 2、3
1 誤
強電解質のモル伝導率Λと濃度Cの関係は、以下のコールラウシュの平方根則で表される。
Λ=Λ0 −b√C Λ0:極限モル伝導率 b:定数
上記の式より、強電解質のモル伝導率は、濃度の平方根に対して減少する。
2 正
難溶解性塩の溶解度は添加する電解質の種類により変化する。
難溶解性塩と共通のイオンを含む電解質を添加した場合、難溶解性塩の溶解度は低下し、難溶解性塩と異なるイオンを含む電解質を添加した場合、難溶解性塩の溶解度は増加する。前者の現象を共通イオン効果といい、後者の現象を異種イオン効果という。
AgClとNaNO3は共通イオンを有しないため、難溶解性塩であるAgClの溶解度は、NaNO3の添加によるイオン強度の増大とともに増大する(異種イオン効果)。
3 正
低濃度(希薄溶液)の強電解質において、イオン強度が増大すると、イオン間の相互作用が増大するため、イオンの平均活量係数は1より小さくなる。しかし、高濃度の強電解質溶液では、イオンと溶媒間に生じる相互作用も考慮する必要があるため、平均活量係数が1より大きくなることがある。
4 誤
イオン間相互作用は、陽イオンと陰イオンに働く相互作用のことであり、誘電率と反比例の関係を示す。そのため、水中における電解質のイオン間相互作用は、アルコールなどを添加して溶媒の誘電率が低下すると増大する。
5 誤
アルカリ金属における極限モル伝導率は、水和イオン半径の大きさに依存する。アルカリ金属において、イオン半径が小さいほど、電子密度が高いため、水分子と強く水和する。水分子と強く水和したイオンは水和半径が大きくなるため、水中の移動度が小さくなり、極限モル伝導率は低くなる。
このことより、アルカリ金属における極限モル伝導率は、K+>Na+>Li+の順に小さくなっている。
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