薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 理論問題 - 問 114
下図は、ヒトの尿素回路(オルニチン回路)の概略を示している。以下の記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ①と②の反応では、ATPが消費される。
2 ②の反応は、この回路の律速段階である。
3 化合物Aは、一酸化窒素(NO)合成酵素の基質となる。
4 NH3の窒素原子は、この回路により化合物Bに組み込まれる。
5 この回路の一部の反応はペルオキシソーム内で行われるが、それ以外は細胞質で行われる。
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解答 1、4
ヒトの尿素回路(オルニチン回路)は、主に肝臓の細胞質およびミトコンドリアに存在し、アミノ酸の酸化的脱アミノ反応などにより生じた有毒なアンモニアを、毒性の少ない尿素に変換する経路である。
1 正
①の反応は、アンモニア(NH3)、CO2 及び2ATPが反応しカルバモイルリン酸が生成する。また、②の反応では、アルギニノコハク酸合成酵素の作用により、シトルリン、アスパラギン酸及びATPが反応しアルギニノコハク酸が生成する。
2 誤
尿素回路の律速段階は、①の反応であり、律速酵素であるカルバモイルリン酸シンターゼ(CPSase)Ⅰによって触媒されている。カルバモイルリン酸シンターゼ Ⅰはグルタミン酸とアセチルCoAから合成されるN−アセチルグルタミン酸によりアロステリックな調節を受ける。
一般的に、アミノ転移反応により種々のアミノ酸の分解が増えると、グルタミン酸濃度が上昇する傾向があるため、N−アセチルグルタミン酸の合成量が増加する。その結果、カルバモイルリン酸シンターゼ Ⅰは活性化され、尿素回路は促進される。
したがって、多量のアミノ酸の分解によりアンモニアが多量に産生された場合にも、カルバモイルリン酸シンターゼ Ⅰの活性化により、アンモニアを処理することが可能になる。
3 誤
化合物Aはオルニチンであり、一酸化窒素(NO) 合成酵素の基質ではない。なお、一酸化窒素の合成酵素の基質はアルギニンである。
4 正
化合物Bは尿素である。尿素中の窒素原子の1つは、①の反応により導入されたNH3 由来であり、尿素中のもう一方の窒素原子は、②により導入されたアスパラギン酸由来である。
5 誤
尿素回路を触媒する酵素群は、肝臓のミトコンドリアと細胞質に存在する。NH3からシトルリンが生成するまでの反応を触媒する酵素はミトコンドリアに存在し、それ以外の反応を触媒する酵素は細胞質に存在する。
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