薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 理論問題 - 問 170
タクロリムスの治療薬物モニタリング(TDM)に関する記述のうち、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 血液中の赤血球画分に多く分布するため、測定サンプルとして血清ではなく全血を使用する。
2 腎障害の発現を回避するために、血中濃度のピーク値を20 ng/mL以下に維持することが望ましい。
3 主に未変化体として胆汁中に排泄されるため、肝機能が低下した患者では血中濃度が高くなる。
4 CYP3A4やP−糖タンパク質を誘導する薬物を併用している患者では、血中濃度が高くなる。
5 血中濃度が治療域に維持されていても十分な効果が得られない場合には、シクロスポリンの併用を検討する。
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解答 1
1 正
治療薬物モニタリング(TDM)を行う際、通常であれば血漿中濃度、血清中濃度を用い測定を行う。しかし、タクロリムスやシクロスポリンは赤血球中へ多く分布するため、血漿中濃度もしくは血清中濃度だけでなく血球を含めた全血中濃度を測定する。
2 誤
タクロリムスでは、急性腎不全やネフローゼ症候群などの副作用が発現する可能性がある。そのため、血中濃度のトラフ値を20 ng/mL以下に維持することが望ましい。
3 誤
タクロリムスは、主にCYP3A4で代謝を受け、代謝物の大部分は胆汁中に排泄される。そのため、肝機能が低下した患者では血中濃度が高くなる。
4 誤
タクロリムスは、CYP3A4やP−糖タンパク質により代謝及び排泄されるため、CYP3A4やP−糖タンパク質を誘導する薬物を併用している患者では、血中濃度が低くなる。
5 誤
タクロリムスとシクロスポリンは、共にCYP3A4によって代謝を受ける。タクロリムスとシクロスポリンを併用することにより、CYP3A4を取り合うため競合阻害が生じる。そのため、タクロリムスの血中濃度が上がり副作用が発現しやすくなることから、タクロリムスとシクロスポリンは併用禁忌である。
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