薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 理論問題 - 問 191
36歳女性。主婦。最近、左乳房の腫瘤に気付き、病院の乳腺外来を受診した。
身体所見:身長158 cm。体重50 kg。血圧128/70 mmHg。左乳房の触診にて、内上方に1 cm大の硬結を触知した。生理周期28日。
検査所見:尿所見 正常、末梢血検査 異常なし。
生化学的検査・腫瘍マーカー検査:CEA8.0 ng/mL(正常値5.0 ng/mL以下)、
エストロゲン感受性(+)、プロゲステロン受容体(+)、HER2蛋白 陰性。
CEA;carcinoembryonic antigen
HER2;human epidermal growth factor receptor type 2
検査の結果、外科的手術を行い、その後、薬物治療を行うこととなった。
この患者に適応となる薬物はどれか。2つ選べ。
1 トラスツズマブ
2 アナストロゾール
3 タモキシフェンクエン酸塩
4 フルベストラント
5 ゴセレリン酢酸塩
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解答 3、5
本患者は、左乳房の腫瘤および腫瘍マーカー検査におけるCEAの高値より乳がんであると考えられる。また、年齢36歳で生理周期が28日であり、生化学的検査においてエストロゲン感受性(+)であったことから、エストロゲン受容体陽性の閉経前乳がんであると考えられる。
1 誤
トラスツズマブはHER2(human epidermal growth factor receptor type 2)に対するモノクローナル抗体製剤であり、HER2過剰発現が確認された乳がんや胃がんの治療に用いられる。本患者はHER2蛋白陰性であるため適応とはならない。
2 誤
アナストロゾールはアロマターゼ阻害薬であり、アンドロゲンからのエストロゲンの生成を抑制することで、エストロゲン受容体陽性の閉経後乳がんの治療に用いられる。本患者は閉経前乳がんであるため適応とはならない。
3 正
タモキシフェンクエン酸塩は乳がん組織におけるエストロゲン受容体遮断薬であり、エストロゲン受容体陽性の閉経前および閉経後乳がんの治療に用いられるため、本患者に適応となる。
4 誤
フルベストラントはエストロゲン受容体分解促進薬であり、単剤でエストロゲン受容体陽性の閉経後乳がんの治療に、LH-RHアゴニスト(リュープロレリンなど)とパルボシクリブ(CKD4/6阻害薬)との併用で閉経前乳がんの治療に用いられる。本患者は閉経前乳がんではあるが、本症例ではLH-RHアゴニストとパルボシクリブの併用は確認できないため適応とはならない。
5 正
ゴセレリン酢酸塩は性線刺激ホルモン放出ホルモン(Gn-RH)製剤であり、頻回投与でエストロゲンの分泌を抑制することで、エストロゲン受容体陽性の閉経前乳がんの治療に用いられるため、本患者に適応となる。
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