薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 206,207
28歳男性。悪性軟部腫瘍の転移が判明し、病棟カンファレンスにおいてイホスファミドの投与が検討された。薬剤師は、イホスファミドによる治療及びメスナの投与に関して医療スタッフに説明を行った。
問206(実務)
薬剤師の説明として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 イホスファミドによる骨髄抑制を予防するために、メスナの投与が必要です。
2 メスナの投与により抗腫瘍効果が減弱するので、イホスファミドを増量する必要があります。
3 メスナの併用により脳症が現れることがあるので、観察を十分に行ってください。
4 イホスファミドは肝代謝により消失するので、腎機能の考慮は不要です。
5 イホスファミド投与開始の1時間前から頻回に、かつ大量の水分摂取を行わせてください。
問207(物理・化学・生物)
メスナは、イホスファミドの代謝物であるアクロレインと反応し、化合物Aを生成する。化合物Aの構造式として正しいのはどれか。1つ選べ。
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問206 解答 3、5
1 誤
イホスファミドの重大な副作用には、骨髄抑制、出血性膀胱炎等がある。メスナは、出血性膀胱炎を予防するために投与されており、骨髄抑制を予防するためではない。
2 誤
メスナとイホスファミドの併用により、イホスファミドの抗腫瘍効果が減弱するという報告はないため、イホスファミドの投与量を増量する必要はない。
3 正
メスナとイホスファミドを併用すると機序不明の脳症が現れることがあるので、観察を十分に行う必要がある。
4 誤
イホスファミドは主に肝代謝により消失するが、その際に生成するアクロレインは腎臓から排泄されるため、腎機能についても考慮する必要がある。
5 正
イホスファミドは、出血性膀胱炎などの泌尿器系障害を予防するため、本剤投与の1時間前から、できるだけ頻回に、かつ大量の経口水分摂取を行い、投与終了の翌日まで1日尿量3,000 mL以上を確保する必要がある。
問207 解答 1
イホスファミドは肝臓でCYP3A4により代謝される際に、アクロレインを生成する。このアクロレインが出血性膀胱炎等の原因物質となるため、メスナによって無毒化する。
その際、メスナとアクロレインの反応は、α,β−不飽和カルボニル化合物であるメスナに対してSH基を持つアクロレインが求核反応する共役付加反応を起こす。
以上より、共役付加反応により生成する化合物Aは選択肢1である。
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